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PubMedID 21878933 Journal Nat Neurosci, 2011 Aug 30; [Epub ahead of print]
Title Scale: a chemical approach for fluorescence imaging and reconstruction of transparent mouse brain.
Author Hama H, Kurokawa H, ..., Sakaue-Sawano A, Miyawaki A
独立行政法人理化学研究所・脳科学総合研究センター  細胞機能探索技術開発チーム    濱 裕     2011/10/01

Scale法
はじめまして。理研・脳センターの濱です。この度、やっと(?)、Scale法によるイメージングについて発表させていただくことができました。この方法の開発は生化学実験をしていた時の記憶からの連想で(もしかしたらサンプルをダメにするかも、という恐怖の中でちょっと勇気を奮いましたが)始まりました。この方法によって組織の中の光散乱がおさえられ、その結果組織の深部まで光が届きます。蛍光タンパクラベルされた神経細胞の形態やconnectionを調べるために、今まで物理的に気が遠くなるくらい切片を切って画像を再構成しなければ3次元的なイメージをとらえることができませんでした。それから少しでも解放されたいと思って頑張ってみました。この方法の特長は2光子レーザーを使わなくても1光子レーザーでかなり深いところまで観察することができることです。共焦点顕微鏡がある施設であれば学部の学生の方でも手軽にトライできるようにということが今回のコンセプトです。Scale法はまだまだ未完成な方法です。なるべく多くの方が試してくださり、結果や難点をフィードバックしていただけると本当にありがたいと思います。機会がありましたらぜひ宜しくお願いいたします。
   
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1 筑波大学・人間総合科学研究科  三輪研  三輪 佳宏 システム? 2011/10/01
濱 先生

ご無沙汰しております。Scale法、大反響ですね。おめでとうございます。

ところで、これはシステム上の問題かもしれませんが、
届いたメールでは後半が文字化けになっていたのですが、このForumに来てみると何も問題なく表示されていて、最後まで読むことができました。
他に、そういう方がおられないようであれば、こちらのシステムの問題なのかと思い、返信してみました。
      
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2 京都大学生命科学研究科  生体制御学  松田道行 反響大きいですね 2011/10/02
昨日、札幌でライブイメージングの話を、病理学関連のシンポジウムで発表しましたら、Scaleはライブイメージンングでもできるんですか、という質問を受けてしまいました。病理学のような形態学の分野ではみなさん非常に興味をもっているようです。ライブでできるとほんとにいいんですけどね。補正光学系の開発はだいじですが、なにかを加えることでライブでも解像度があがるといった方法もあるといいなと思いました。
      
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3 愛媛大学大学院医学系研究科、分子病態医学分野  今村研  今村健志 若い方からのコメントお待ちしています。 2011/10/03
濱さん、おめでとうございます。大反響ですごいですね。
私自身は、補償光学系と長波長化で2光子を使った深部イメージングを改良することを一生懸命やっていますが、逆転の発想も大事だなあと思っている次第です。
松田先生の質問にもあるライブイメージング絵の応用を含め将来構想や名前の由来等お時間ある時にコメント頂ければ幸いです。
三輪さんの文字化けの件については、私へのメールも最後の文が「機会があ◯◯りましたら、、、」と文字化けしていましたが、不便はなかったので、そのままにしておりました。何か重大な問題がありそうでしたら対応したいと思います。
若い方からのコメントお待ちしています。
      
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4 金沢医科大学 病理学I  清川  清川悦子 若くはないですが・・・ 2011/11/22
初めまして。7月まで京大・松田研におりました清川です。8月から金沢医大にきております。

このScale、病理学分野でも大変注目を浴びていると思うのですが、
1) 実際に脳以外のヒト臓器でも試されたことはあるのか?
2) 蛍光蛋白質ではなく、Alexaなどの蛍光物質の場合、色素>Scale, Scale>色素、では変化はないのか?
3)オリンパスの専用レンズ以外でも観察は可能なのか?

以上、質問です。

浜先生、お答えにくいこともあるかと思いますが、何かご存知でしたらお教え頂けると幸いです。よろしくお願い致します。
      
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5 愛媛大学大学院医学系研究科、生化学・分子遺伝学分野  東山繁樹研  井上 博文 調整、保存について 2011/11/26
はじめまして。愛媛の井上と申します。Scale是非ためしてみたいのですが、タンパク実験では、Ureaはできるだけ要時調整がいいといわれていました。この場合はいかがでしょうか?試薬は保存できますでしょうか?
      
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6 理化学研究所 脳科学総合研究センター  宮脇敦史研  宮脇敦史 井上さま、ScaleA2のご質問に関してお返事差し上げます 2011/11/27
> はじめまして。愛媛の井上と申します。Scale是非ためしてみたいのですが、タンパク実験では、Ureaはできるだけ要時調整がいいといわれていました。この場合はいかがでしょうか?試薬は保存できますでしょうか?

井上さま、

濱さんと検討してきた結果を元にメールします。
おっしゃるとおりで要時調製が望ましいのですが、ScaleA2溶液の場合、調製したばかりのものを使用すると、組織が損傷する恐れがあります。調製して1日寝かせてから
の使用を薦めています。試薬の保存については、室温で長期に保存すると、尿素の分解によって少しずつpHが上昇する傾向にあります。低温保存またはpH緩衝液のわ
ずかな追加がよいと思います。ただしくれぐれも溶液調製にPBSなどを使用しないでください。塩類はScale処理を阻害します。
実は、9月の終わりから、Scale技術に関するprotocol filesを海外に配布してきました。このフォーラムでcirculateするつもりがすっかり忘れて遅れてしまいました。
すみませんでした。Scale溶液の調製、マウス脳の透明化法、観察のための透明化マウス脳の固定法の3つについてまとめてあります。
今村さんにお願いしてHPにアップしてもらいます。

宮脇敦史
      
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7 独立行政法人理化学研究所・脳科学総合研究センター 細胞機能  宮脇敦史研  濱 裕 2011/11/22清川悦子さまのご質問にお答えします。 2011/12/01
このScale、病理学分野でも大変注目を浴びていると思うのですが、
1) 実際に脳以外のヒト臓器でも試されたことはあるのか?
→現在のところヒトの場合、神経組織の他に腎臓、心臓、小腸の一部についてトライしております。
マウスの場合は腎臓、心臓、小腸については問題なくScale処理が可能です(腎、心の場合はやや時間がかかりますがScaleA2を2日間作用させた後にScaleB4を併用すると
約16-18日間で観察可能になります)。


2) 蛍光蛋白質ではなく、Alexaなどの蛍光物質の場合、色素>Scale, Scale>色素、では変化はないのか?
→これまでにFITC, Rhodamine, Texas Red, NeuroVue Orange, Alexa568, Hoechst dyeなどを試しましたが色素が組織に固定されている状態であればほとんど変化がありません。


3)オリンパスの専用レンズ以外でも観察は可能なのか?
→はい。水とは多少の屈折率のずれがあり(ScaleA2の場合は1.38、水は1.35)やや深い領域 (2mmくらい)で球面収差が出ますが1.6-1.7mmの深さであればほとんど気にならない程度に通常の対物レンズで観察可能です。既存のZeissの20倍の対物レンズWD 2mmで2mmの深さまで問題なく1光子でも2光子でも観察することができます。オリンパスの25倍 WD 4mmの対物レンズは補正環がついていて球面収差を補正することができるという点でScaleA2溶液に至適化させたものです。なお、つい先日の北米神経科学会(Neuron2011, Washington DC)で発表されたZeissのレンズはWD 6mmです。これもでScaleA2溶液に至適化させたものです。
      
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8 金沢医大 病理学I  清川  清川悦子 2011/12/01
濱先生

詳細な情報をありがとうございました。大変参考になります。細かい質問なのですが、再度お願い致します。

肝・腎・心などの実質臓器はなんとなくうまくいきそうな気がしますが、Scale処理で軟らかくなるとのことなので、腸管粘膜が工程中にどの程度損傷を受けるのか、が気になります。そおっと扱うことが対処法でしょうか?

宮脇プロトコルですと、OCTコンパウンドに入れて一度凍結をするとのことですが、これはScaleの浸透性を高めるためなのでしょうか?どの臓器でもこの作業は必須でしょうか??


Scale液がオリンパス発売だったので、オリンパスのみ対応なのかを思っていました。ZeissもOK,レンズも出ているとお聞きし安心しました。

よろしくお願い致します。
      
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9 理化学研究所・脳センター・細胞機能探索技術開発チーム  宮脇ラボ  濱 裕 清川先生のご質問について 2011/12/01
清川先生

ありがとうございます。

>
> 肝・腎・心などの実質臓器はなんとなくうまくいきそうな気がしますが、Scale処理で軟らかくなるとのことなので、腸管粘膜が工程中にどの程度損傷を受けるのか、が気になります。そおっと扱うことが対処法でしょうか?
>
はい。おっしゃる通りゼリー様になるのでずいぶん柔らかくなります。約さじのようなもので掬い上げたりして扱っていただくのがよいと思います。また直接組織をつかむ必要がある時はリングピンセットをお使いいただくのがよいと思います。

> 宮脇プロトコルですと、OCTコンパウンドに入れて一度凍結をするとのことですが、これはScaleの浸透性を高めるためなのでしょうか?どの臓器でもこの作業は必須でしょうか??

はい。このステップは重要なのでスキップすることはできません。凍結しないでScaleを行なうと組織がかなり膨らみ崩壊してしまいます。

宜しくお願いいたします。

濱 裕
      
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