PubMedID | 22231641 | Journal | Nat Methods, 2012 Jan 8; [Epub ahead of print] |
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Title | Fast two-photon in vivo imaging with three-dimensional random-access scanning in large tissue volumes. | ||
Author | Katona G, Szalay G, ..., Roska B, Rozsa B |
新しい2P顕微鏡を開発し、高速ランダムスキャンによってXYZの異なる100を超える部位に刺激を行い、海馬内1mm角ほどの3DイメージングとCa2+スパイクを観察したという論文。
構成要素
・AO素子によるXY,Zのスキャン
・プリズムタイプのネガティブチャープにて分散の補正
・4分割ディテクタによるビーム角度の補正
・特許から得た対物レンズのデータをもとに計算を行うPSFの補正
・Referenceとなる細胞を基準としたXYZのdrift補正
非常に高スペックな装置となっていますが、ハンガリーではこのラボ、二光子顕微鏡の販売もしていたそうです。
1 | 京都大学 医学研究科病態生物医学 松田研究室 中正英二 | 補足 | 2012/01/23 |
もう少し詳しくとの要望がありましたので補足します。
・AO素子によるXY,Zのスキャン AO素子ですが、Z-focusingとXY-scanningと別に用意されてます。 Z-focusingのほうですが、対物上下ではなくてレーザダイバージェンスを変えることによってZ-focusingを行うようにしています。 その結果Zを変えることによって対物瞳を満たさなくなりがちですが、そこのところもうまいこと補正をかけて瞳をみたしてPSFと照明範囲を維持しています。 ・4分割ディテクタによるビーム角度の補正 波長を変えるとレーザヘッドから発振されるビームの角度が微妙にずれてきます。 ビームのズレを光路中にいれた4分割ディテクタでビームの位置を検出してミラーで補正をしています。 今のレーザはかなりよくなってビームポインタビリティはよくなっています。 ・プリズムタイプのネガティブチャープにて分散の補正 2ndOrderの分散が最大で72000fs^2もあるみたいです。TeO2素子をぜいたくに使っているのでそれだけの分散が出るのでしょう。 MAITAIDeepSeeでは補正量が足りず、独自で分散補正プリズムを用意しています。 ・特許から得た対物レンズのデータをもとに計算を行うPSFの補正 AO素子による分散(色収差)を、非球面なプリズムを利用して補正しているみたいです。 最終的には対物レンズのデータを含むレンズ系すべてを考慮して、PSFの計算を行っています。 ・Referenceとなる細胞を基準としたXYZのdrift補正 リファレンスとなるグリア細胞を指定して、ランダムスキャンを行う際にリファレンスのグリア細胞付近に対してXYZスキャンを行い、 輝度が最も明るくなるところがベストな位置となるようにXYZのゼロ点を補正しています。 もう一つ、すごい技術の応用なのですが、3D virtual-realit user interfeceというやつですか。 Supplementary Note 5およびSupplementary Video2。ほんまかいな!と思いますが本当のようです。 http://www.0c7.co.jp/products/leonar3do/ ← この製品を利用してます |
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2 | 早稲田大学先進理工学部生命医科学科 井上研究室 井上 貴文 | 3D ランダムスキャン2光子顕微鏡 | 2012/01/29 |
中正さん、紹介と解説をありがとうございます。2Dランダムスキャン2光子顕微鏡をなんとか動かしている私としては非常に高い技術レベルに目を奪われました。X-Y方向に加えZ方向もAODで高速にビームスポットを動かす試みは既に論文が出ていますが、これを数百マイクロメートルという、脳イメージングの要求に足る深度で実現したことは評価されます。このためにAOD素子を含め光学素子の何点かをカスタムで製作することから始めています。
アプリケーションとして下記のふたつをとりあげています。どちらもカルシウム指示薬により電位変化の二次的変化としてのカルシウム変化を指標としています。 1. 単一ニューロン樹状突起中の活動電位の伝搬。 脳切片中の単一神経細胞内の電位伝搬については近年膜電位依存色素と高速CCD(~ 2 KHz)による論文が出てきていますので、本論文のデータ自体は驚くべき内容ではありませんが、カルシウム色素と2光子励起による高S/Nのシグナルは魅力的です。 2. 生体脳での視覚刺激に対する一次視覚野の数百umのボリューム中の神経細胞の応答。 生体脳での神経細胞集団の発火頻度計測は多極電極あるいはカルシウム色素と高速共焦点(~30 Hz)による研究が盛んで、前者は神経細胞の数の限界、後者は深さの制限と時間解像度の制限が短所ですが、本システムはこれを解決して局所回路の神経細胞集団の挙動の解析に大きく貢献するポテンシャルがあります。また、カルシウム色素の時間分解能(数十msec)では神経細胞同士のコネクションの前後関係(数msec)ははっきりわかりませんが、このシステムで膜電位色素を使うことによりそれも解決できる可能性があります。(脳組織中の神経細胞をうまく染められる電位感受性色素をどなたか作って下さい!) この論文は光学・ソフトウェアの技術者と脳科学の研究者による共同作業があってこその高い技術を示しており、ハンガリーの技術水準を知らしめるものだと思います。 > もう少し詳しくとの要望がありましたので補足します。 > > ・AO素子によるXY,Zのスキャン > AO素子ですが、Z-focusingとXY-scanningと別に用意されてます。 > Z-focusingのほうですが、対物上下ではなくてレーザダイバージェンスを変えることによってZ-focusingを行うようにしています。 > その結果Zを変えることによって対物瞳を満たさなくなりがちですが、そこのところもうまいこと補正をかけて瞳をみたしてPSFと照明範囲を維持しています。 > > ・4分割ディテクタによるビーム角度の補正 > 波長を変えるとレーザヘッドから発振されるビームの角度が微妙にずれてきます。 > ビームのズレを光路中にいれた4分割ディテクタでビームの位置を検出してミラーで補正をしています。 > 今のレーザはかなりよくなってビームポインタビリティはよくなっています。 > > ・プリズムタイプのネガティブチャープにて分散の補正 > 2ndOrderの分散が最大で72000fs^2もあるみたいです。TeO2素子をぜいたくに使っているのでそれだけの分散が出るのでしょう。 > MAITAIDeepSeeでは補正量が足りず、独自で分散補正プリズムを用意しています。 > > ・特許から得た対物レンズのデータをもとに計算を行うPSFの補正 > AO素子による分散(色収差)を、非球面なプリズムを利用して補正しているみたいです。 > 最終的には対物レンズのデータを含むレンズ系すべてを考慮して、PSFの計算を行っています。 > > ・Referenceとなる細胞を基準としたXYZのdrift補正 > リファレンスとなるグリア細胞を指定して、ランダムスキャンを行う際にリファレンスのグリア細胞付近に対してXYZスキャンを行い、 > 輝度が最も明るくなるところがベストな位置となるようにXYZのゼロ点を補正しています。 > > もう一つ、すごい技術の応用なのですが、3D virtual-realit user interfeceというやつですか。 > Supplementary Note 5およびSupplementary Video2。ほんまかいな!と思いますが本当のようです。 > > http://www.0c7.co.jp/products/leonar3do/ ← この製品を利用してます |
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