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PubMedID 22277578 Journal Cell Struct Funct, 2012 Jan 24; [Epub ahead of print]
Title Live Imaging of Protein Kinase Activities in Transgenic Mice Expressing FRET Biosensors.
Author Kamioka Y, Sumiyama K, ..., Kiyokawa E, Matsuda M
京大  生体制御    松田道行     2012/02/02

PKAchu対Eisuke
FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスで使えるものはほとんどありませんでした。先日、東大の三浦研では、insulatorを使ってSCATの発現に成功しましたが、私たちは遺伝研の隅山先生と共同でTol2トランスポゾンを使って発現することに成功しました。この方法はこれまでの苦労がなんだったのかというくらい簡単に高発現のマウスを作ることができます。
 この仕事はRaichu開発以来の大ヒットと自分では思っていますが、「なにかびっくりする発見」がないと三大誌は出してくれないので、本邦の雑誌に発表することにしました。リンパ球ではやや発現が弱いですが、おおむねすべての細胞で発現しています。また、バイオセンサーの発現量が同一系統の細胞ではほぼそろっていますので、活性変化を追うのも容易です。系統維持は、蛍光ペンライトで光っているマウスを選ぶだけですからgenotypingも不要。当面、本邦限定ですから、アイデアがあれば早い者勝ち。ぜひ、みなさん使ってください。
 PKAchuマウスはPKAのバイオセンサー、EisukeマウスはERKのバイオセンサーを発現しています。
 3月にこのトランスジェニックマウスを二光子顕微鏡で観察する技術の講習会を行います。5名様限定ですので、こちらもお早めにお申し込みください。
   
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1 理研  宮脇研  さかうえさわの あさこ みえてきました! 2012/02/03
松田先生 皆様
論文拝見いたしました。
大変な仕事量であること、容易に想像つきます。

トランスジェニック動物の作製には沢山のノウハウがあり、とても大変な事が多いです。私は”神の手”も必要なんだと思っています。(ちなみに理研には、マウス作製を依頼する部署がありますので、そこがそれにあたります。)
今回のTolII システムがマウスでも非常に有効である事を示していただき、ひとつ解決策がみえてきました。

〜質問〜
・今回の方法でも、Raichu マウスはまだ難しいという事でしょうか?
・今回のFRET indicator は Eevee によってdominant negative effect を減弱させる事が出来たから、その更なる効果であるのではないでしょうか?(と私は想像しています。)
・それぞれのマウスで、複数系統得られているようですが、発現パターンの違いなどはなかったのでしょうか?(言い換えますと、CAGGSプロモーターの組織特異性や、インテグレーションサイトの差異などをTolIIシステムによって解消できているのでしょうか?)


すでに、これらのマウスを使って、いろいろなin vivo imaging を実行されているのかと思います。私もいくつか自分が見てみたい現象を想像しながらワクワクしています。


      
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2 京大  生体制御  松田道行 Raichu 2012/02/03
ありがとうございます。
・今回の方法でも、Raichu マウスはまだ難しいという事でしょうか?
MM: 残念ながら、Raichu-Rasを発現する個体で十分に明るいものは、体が小さく不妊でした。Raichu-Rasは培養細胞ではあまり毒性がないのに、マウスではなぜだめか?というのもたいへん興味はあるのですが、これは別件です。しかし、Cre誘導型のものは機能しています。Rhoファミリーのものは普通に作成できます。

・今回のFRET indicator は Eevee によってdominant negative effect を減弱させる事が出来たから、その更なる効果であるのではないでしょうか?(と私は想像しています。)
MM: たしかにFreeのRas binding domainの量が増えることになりますから、DN効果が増強された可能性はあります。

・それぞれのマウスで、複数系統得られているようですが、発現パターンの違いなどはなかったのでしょうか?(言い換えますと、CAGGSプロモーターの組織特異性や、インテグレーションサイトの差異などをTolIIシステムによって解消できているのでしょうか?)
MM: なにぶんケージ不足で、一見して明るいマウス以外はほとんど処分しています。明るい=皮膚で発現が強い、ということでバイアスはかかっています。論文の胎児組織をみていただければわかりますように、すべての系統でほぼubiquitousに発現しています。Transposonがinsulatorの役割をするかは興味があるところです。培養細胞では、継代中にプローブが暗くなるということがほとんどないことから、insulatorの役割も担っているのではないかと推察しています。

Fucciのようにユーザーが増えることを希望しています。

P.S. Tol2開発者の川上先生から、Tol2システムをぜひご利用くださいとの伝言がありました。
http://kawakami.lab.nig.ac.jp/trans.html
      
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3 国立循環器病研究センター研究所  細胞生物学部(望月研)  福原茂朋 ありがとうございます 2012/02/06
松田先生
論文をご紹介頂き有難うございます。
私たちはRaichuバイオセンサーを使わせて頂いてゼブラフィッシュでin vivoイメージングを試みていますが、マウスでその解析が出来るということは、とてもすごい事だと思います。Cre誘導型のマウスも作製されているようですが、見たい細胞だけでバイオセンサーを発現して、解析することが出来れば、さらに強力なツールになると感じました。また、トランスジェニックマウスの作製に、Tol2システムが有効である点も、非常に重要な知見だと思いました。ちなみに、Tol2システムでトランスジェニックマウスを作った場合、何カ所くらい目的遺伝子がインテグレーションされるのでしょうか。沢野さんの質問とも関連しますが、明るいマウスと暗いマウスの違いが、インテグレーションされた遺伝子の数に依存するのか、インテグレーションされた場所に依存するのか興味があります。
      
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4 京大  生体制御  松田道行 コピー数 2012/02/06
コピー数をちゃんと決めなければと思ってはいるのですが、諸般の事情でやってません。ただ、これまでの経験では、ほぼMendelianに近い遺伝形式をしていますから、複数コピー入ってはいないと思います。数代経れば、たいていはシングルコピーになっているはずなので、あまり問題にはしていません。
      
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