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PubMedID 21173800 Journal Nat Cell Biol, 2011 Jan;13(1);3-5; author reply 5-7,
Title Reducing background fluorescence reveals adhesions in 3D matrices.
Author Kubow KE, Horwitz AR
京都大学大学院生命科学研究科、生体制御学分野   松田道行研究室    八木俊輔     2011/02/02

三次元基質内を遊走する細胞のfocal adhesionをリアルタイムに可視化する
ガラスなどの硬い二次元基質上で遊走する細胞におけるfocal adhesionの形成は、蛍光タンパク質融合型paxillinなどの発現により容易に可視化することができますが、三次元基質内で遊走する細胞のFAの形成はこれまで確認されていませんでした。これは細胞質内の蛍光シグナルが強すぎるから見えていないだけなのか、三次元基質内でFAが形成されないのかはっきりしていませんでした。この論文では「truncated CMV promoter」を用いる事で低いレベルでGFP-paxillinを発現させ、リアルタイムでFA形成の可視化に成功しています。(使用した顕微鏡はオリンパスの共焦点顕微鏡FV1000。コラーゲンファイバーは反射で見ています。)
   
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1 名古屋大学医学部細胞生物学  宮田卓樹研究室  榊原明 2011/02/05
これまでに接着斑の成長にはアクトミオシン系の張力が関与することが示されており、培養皿等の動かない担体上で培養した時には発達しやすいが、張力がかかると担体自体が動いてしまうコラーゲンゲルなど可塑性のあるマトリクスに埋め込んだ場合には接着斑が発達しにくいという認識がありました。Kubow and Horwitzに続いて掲載されているReplyの論文では、マトリクス中であっても辺縁部と中心部では可塑性の度合いが異なるので接着斑の成長しやすさが異なると説明していますがもっともだと思います。また、生体組織内、とりわけしっかりとした結合組織が発達していない発生期にも細胞は盛んに動いているわけで、あまり接着斑が発達していない状況であっても移動をサポートするに足るインテグリン接着が機能している可能性が高いと思われます。つまり、3次元マトリクス内でも接着斑は形成されうるが(様々な工夫によりこれまで見えなかったものが見えるようになったというのは賞賛に値すると思います)、可視化できる大きさの接着斑形成の有無と細胞移動能の有無は別の次元の問題であり、ごっちゃにすると混乱を招きかねないので気をつける、ということでしょうか。
      
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2 愛媛大学大学院医学系研究科分子病態医学  今村研  疋田温彦 truncated CMV promoter 2011/02/08
発現量を減らしてバックグラウンドを下げることが非常に重要だったとのことで、truncated CMV promoterでどの程度発現量が下がるのかという情報が欲しいところですが、リファレンスを読んでも良くわかりませんでした。truncated CMV promoterを用いた他の論文(Mol Biol Cell. 2004 Jun;15(6):2537-48. Epub 2004 Mar 12.)ではせいぜい数分の一の低下ですが、truncationの方法が違うので何とも言えません。一過性の発現ではなく発現量の低い安定株を取るという方法では越えられない壁だったということでしょうか。
      
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