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PubMedID 22198435 Journal Biochem Biophys Res Commun, 2012 Jan 13;417(2);765-70,
Title Structural differences in the osteocyte network between the calvaria and long bone revealed by three-dimensional fluorescence morphometry, possibly reflecting distinct mechano-adaptations and sensitivities.
Author Himeno-Ando A, Izumi Y, Yamaguchi A, Iimura T
東京医科歯科大学  グローバルCOE  口腔病理学分野    飯村忠浩     2012/04/19

IMARIS(Bitplane)を用いた、骨細胞ネットワークの3次元形態計測
骨細胞は、石灰化した骨組織中にあるいわば星型の細胞で、骨基質中で細胞突起を伸ばし細胞間ネットワークを形成しており、骨を構成する細胞の90-95%を占める最も多い細胞集団である。(組織学の教科書等では、ぞんざいに扱われていることが多いが)骨細胞は骨へ伝わった機械的負荷を感知し、骨芽細胞や破骨細胞に細胞ネットワークを介して情報伝達し、骨代謝を調節している。さらに、リン代謝調節ホルモンであるFGF23を分泌し、血中リンレベルの調節に重要な役割を担っている(骨の領域では最近流行の細胞である)。
骨細胞がどのようにして、機械的負荷を感知するかについては不明な点が多い。もっとも良く受けいれられている流体剪断応力(ずり応力)モデルでは、骨に加わった機械的負荷によって生じた骨細管ネットワーク内の間質の微細な流れの変化が細胞膜で感知され、細胞突起内の細胞骨格の変化として細胞内に伝わると考えられている。骨格系の構造は、機械的負荷に反応して発達し、骨梁構造や骨細胞の配列も機械的負荷に対応している(かのように見えることがしばしばある)。したがって、骨細胞を対象とした3次元形態計測は、骨細胞の生理的機能や病態変化を知る上で極めて重要であると考えられる。
8週齢の雄マウスより、頭頂骨と脛骨を採取し、固定、脱灰の後、凍結切片を作成した。
細胞質および細胞突起を緑の蛍光で、細胞核を赤の蛍光で可視化するため、f-actinをAlexaFluor 488Phalloidin (A12379,Invitrogen)で、核を BOBO-3 iodide (570/602)(B3586, Invitrogen)でそれぞれ染色した。蛍光シグナルの観察は、共焦点レーザー顕微鏡Pascal5 (Zeiss)で行った。対物レンズは、PlanFluor (N.A. = 1.4) x63 (Zeiss)を用いた。緑色励起および赤色励起は、それぞれMulti-Argon レーザーで488nm、HeNeレーザーで543nmの波長で行った。緑色蛍光および赤色蛍光は、510-530のバンドパスフィルター 560-のロングパスフィルターで取得した。PMTのピンホール設定は、1AU(にした。プロジェクション(投射)像の作成および3次元立体画像の構築のため、0.29 micro-m間隔の光学切片を数枚取得し、IMARISで画像処理を行った。
 FilamentTracerによる細胞突起の計測の際に、Endo Point(終末点)の設定が大切なファクターだと思われた。終末点の直径のサイズを0.2-0.3micro-mに設定した場合、より詳細な樹状モデルを描けたが、計測値にはかなりの誤差が含まれていると考えられた。これは、プログラム上、微細な蛍光シグナル間を細胞突起としてつないでしまうことや、細胞体表面の微細な突起用構造をも細胞突起として認識してしまうためと考えられた。いっぽうで、終末点の直径のサイズを0.4-0.5 micro-mに設定した場合の樹状モデルは、実際の蛍光3次元画像と良く一致し、計測値にも矛盾点が少ないように思われた。
 今回用いたレンズでの理論的なresolutionは、xy方向、z方向で0.178 および 0.700 micro-mである。また、撮像の際のピクセル(ボクセル)サイズは、0.29 micro-mであるので、深追い(微細過ぎる構造の計測の追及)は禁物だと思われた。
   
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1 京都大学  生体制御学  松田道行 勝手に移動させました: 事後承諾ですいません。 2012/04/19
Virtual imaging centerのほうに投稿されたので、勝手にForumへコピーしてしまいました。すいません。

骨の標本は難しいと思いますが、凍結のほうがいいのでしょうか。脱灰までしたらあとはパラフィンにいれたほうがきれいに切れるように思いましたけれど。

Fig.2にスケールがなかったのでちょっとサイズの感じがわからないのが残念です。今度、会議の時にでも教えてください。
      
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2 名古屋大学医学部  宮田卓樹研究室  榊原明 組織片の核染色に関して 2012/04/20
技術的な質問させて下さい。

> 細胞質および細胞突起を緑の蛍光で、細胞核を赤の蛍光で可視化するため、f-actinをAlexaFluor 488Phalloidin (A12379,Invitrogen)で、核を BOBO-3 iodide (570/602)(B3586, Invitrogen)でそれぞれ染色した。

に関して、論文中では、以下のように書いてありました。

BOBO-3 (Invitrogen) for counter staining of nuclear DNA with 20 μg/ml of RNAaseI (Invitrogen) at room temperature for 2 h

以前、PFA固定したビブラトーム組織片(厚さ100ミクロン程度)の核染色をDAPI以外の色素(TOTO3, TOPRO3など)で試した際、染めムラが多く、組織深部まで一様に染まらなくて、2-3回試しただけであきらめた経験があるのですが(このときは細胞膜の透過性がDAPIと比べて低いのではないかと勝手に解釈)、RNase処理で染まりやすくなるのなら、もう一度試してみようかと考えています。

RNase処理の有無で、どれくらい染まり方に差が出るか比較したことがあったら教えていただけないでしょうか?

BOBO-3以外の色素を核の染色に試してみた情報なども有り難いです。

よろしくお願いいたします。
      
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3 東京医科歯科大学 グローバルCOE  口腔病理学  飯村 BOBO-3による染色について。 2012/04/23
榊原 先生、
質問ありがとうございます。BOBO-3 YOYO-1でトライしましたが結構苦労しました。とくに、凍結切片では、細胞組織にもよりますが、細胞質にむしろ良く染まったりします。ビブラトームでも同様の結果がでるのは想像に難くないです。ひとつは、RNAも良く染めてしまうからのようで、RNase処理で対応しました。骨細胞の場合は、これでOKでしたが、他の組織によってはやはり、核以外の部分が良く染色されたりして悩ましいです。パラフィン切片の場合は、この論文の処理法で概ね良好な核染色が得られました。最近は、赤色の核染色は、結局昔から使われているPIを多用することにしました。この際もRNase処理はしたほうが断然染色特異性が高くなります。ただ、保存(冷凍など)しておくと脱色します。そう言う意味のRetentionはBOBO-3の方が良い気がします。浸透性も考えて、0.1%TritonXは入れています。DAPIやHoechstによる核染色は楽なのですが、BOBO-3 YOYO-1による染色は条件設定をわりとしっかりやる必要があるステップかもしれません。高価なのに扱いにくい、そんな、印象です。
      
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4 東京医科歯科大学 グローバルCOE  口腔病理学  飯村忠浩 骨の切片について 2012/04/23
松田先生、コメントありがとうございます。
おっしゃるように、骨の切片は、パラフィンの方がきれいなしわのないものが得られやすいです。本論文の場合では、骨細胞の細胞質・細胞突起に豊富なf-actionをPhalloidinで染色しているのですが、私の経験ではアルコール類に通した組織はPhalloidinに染まりにくくなります。そのため、凍結切片を適用しています。
Fig2の樹状モデルは、Fig1aおよびbをもとにしているので、Fig1と同じスケールすです。
      
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5 筑波大学  三輪研  三輪佳宏 Molecular Probesの核酸染色色素 2012/04/23
> 質問ありがとうございます。BOBO-3 YOYO-1でトライしましたが結構苦労しました。

私は、フローサイトメーターを使ったcell cycleの解析に使えるものがないか、約20種類の色素を片っ端から試しました。この目的に合う条件は、1)生きている細胞に入ること、2)DNAに選択的に染色できること、です。
結果、BOBOなどのdimer samplerは全滅、アルコール固定して無理矢理中に入れても、RNAも染めるものがほとんど。SYTOシリーズは中に入りますが、やはり選択性がなく全滅。SYTOXは入らないのでもともとダメですが、固定した場合はDNAへの選択性が見られるものもあり。PicoGreenはやはり生きていると入りませんが、さすがにうたい文句だけあってDNAへの選択性はバッチリ、そんな感じでした。
そうこうするうちにDyecycleが出たので、まあまあそれなりに問題は解決しましたが、この色素であれば固定したサンプルを用いても、DNAに極めて選択的に、かつある程度定量的に染色できると思います。
まあそんな訳で当初の目的は達せられませんでしたが、SYTOシリーズの中にはHoechstのかわりに使えるMDR1によって効果的に汲み出しを受ける蛍光色素と、まったく受けないものなどがいくつか発見できてasssay系が組めたのは、まさに行きがけの駄賃でした(笑)
      
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6 名古屋大学医学部  宮田卓樹研究室  榊原明 情報提供ありがとうございます 2012/04/23
> そうこうするうちにDyecycleが出たので、まあまあそれなりに問題は解決しましたが、この色素であれば固定したサンプルを用いても、DNAに極めて選択的に、かつある程度定量的に染色できると思います。

2年以上前に少しトライしてあきらめていましたが、最近は色々な色素が売られているのですね。

赤色レーザーで使えるDyecycle Rubyという色素、試してみることにします。
      
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7 東京医科歯科大学 グローバルCOE  口腔病理学  飯村忠浩 核染色について、 2012/04/23
三輪先生、榊原先生、
コメントありがとうございます。
Dyecycle私も、いろいろ試してみます。
榊原先生、単に組織の核染色(赤)でしたら、PIが綺麗です。Mototic IndexもDAPIほどではないですが、鮮明に見えます。BOBO-3では、そう言った意味でのキレもありませんでした。PIでは、RNase処理(30分x37度)で殆どの組織の核がきれいに染まるようになりました。それでも、染色ムラは確かにあるような気がしますが。
      
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8 名古屋大学医学部  宮田卓樹研究室  榊原明 お礼、その2 2012/04/23
飯村さん

最近、こちらではGFPと赤色蛍光タンパク質の組み合わせで既に2色入っているサンプルを使うことが多いので、まずはDyecycle Rubyを試してみようと思っていますが、その際にはRNase処理との組み合わせも試してみます。

> 榊原先生、単に組織の核染色(赤)でしたら、PIが綺麗です。Mototic IndexもDAPIほどではないですが、鮮明に見えます。BOBO-3では、そう言った意味でのキレもありませんでした。PIでは、RNase処理(30分x37度)で殆どの組織の核がきれいに染まるようになりました。それでも、染色ムラは確かにあるような気がしますが。
      
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9 愛媛大学 医学系研究科 分子病態医学分野  今村研究室  本蔵 直樹 生細胞で使えそうな核染色は存在しますでしょうか? 2012/04/25
三輪先生

初期の議論とは異なってしまって申し訳ないのですが、
生細胞で使えそうな核染色は存在しますでしょうか?
【1)の部分に当たります。】
よく言われているABCトランスポーターによる薬剤排出機構により、生細胞では核染色が上手くいかないと効いたことがあるのですが(Hoechstなど)、
実際固定サンプルのPI染色像が生細胞で使用出来たら、
どんなに便利かと思っているのですが、H2B-GFPなどのGFP結合タンパク質を
用いる以外に、やはりそのようなものは現状存在しないと
考えたほうが妥当なのでしょうか?

ご存知の先生がおりましたら、ご教授いただけると幸いです。

本蔵直樹
      
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10 筑波大学  三輪研  三輪佳宏 生細胞で使えそうな核染色用色素 2012/04/25
本蔵 直樹 さま

> 生細胞で使えそうな核染色は存在しますでしょうか?

DyeCycle色素のシリーズは、いずれも生細胞に入り、DNAに選択性があります。
ですので使える可能性はあると思います。
と言っても、私自身はFCMにしか使っていないので、自分で確認していない
ところが申し訳ない限りですが。

> よく言われているABCトランスポーターによる薬剤排出機構により、生細胞では核染色が上手くいかないと効いたことがあるのですが(Hoechstなど)

結局、細胞によってトランスポーターの発現強度が異なりますので、細胞ごとに
染色の濃度とタイミングをある程度決めておいた方がいいと思います。
しかし、まったく核染色に使えない、という細胞はそれほど多くないのではないかと
思います。現実にHoechstで染めておられる方は多いと思います。

上記のDyeCycleは、MDR1の過剰発現細胞とそうでないものでの比較実験をやって
いませんので、正確なところはわかりませんが、日頃使ってみた印象からすると
色によっては染色の濃度とタイミングで染まり具合が変化する印象があるので
もしかしたらABCトランスポーターの影響を受けているのかもしれません。
      
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11 愛媛大学 医学系研究科 分子病態医学分野  今村研究室  本蔵 直樹 前例の無いことは研究の醍醐味? 2012/04/25
三輪先生

早速のコメントありがとうございます。
DyeCycle早速購入して、生体光イメージングに使用できるか試してみたいと思います。
Molecular Probesのプロトコールを見てみると、非常に簡便で単に混ぜてその後待つだけと思われるのですが、何か他に染色のコツなどはございますでしょうか?
またpubmedで検索をかけるとたったの9件しか引っかからず、
ほとんどFACSのデータばかりで、参考になるものが見つかりませんでした。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=%20DyeCycle
イメージングで使用されている例ご存知でしょうか?(あまりないのだとは思いますが)
まあ研究ですので、前例の無いことは良いことと前向きにサンプルに混ぜてみたいと思います。
貴重な情報提供をしていただきありがとうございました。

本蔵
      
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12 京都大学生命科学研究科生体制御学  松田道行研  青木一洋 DyeCycleRuby 2012/04/26
培養細胞(HeLa)の核をDyeCycleRubyで染色しています。HeLa細胞の場合は、プロトコルに従って、培地にそのままDyeCycleRubyを入れています。核の蛍光が大体20-30分後くらいにピークが来て、なぜかその後は減少するということが観察されています。ですので、いつも染色後20-30分でイメージングしています(プロトコルにも30分後にイメージングと書いてあります)。蛍光の減少については正直良く分かりません。培地をwashしていないので、平衡状態に達して変化しなさそうなのですが・・・これはうちだけの問題かもしれません。
あとは、Hoechst33258は生細胞できれいに染まります。赤蛍光ではなく青蛍光ですけど。ちなみに、DyeCycleRubyもHoechstも高濃度で染色すると細胞周期が止まるようです。DNAにこれらの色素が入ったからなのか、それともイメージングによってDNAにダメージが入って止まったのか、どちらか分かりませんが。

参考になれば幸いです。
      
   本文引用
13 愛媛大学 医学系研究科 分子病態医学分野  今村研究室  本蔵 直樹 研究の世界は早かった。 2012/04/26
青木先生

お久しぶりです。大昔の生理研研究会以来でしょうか?またコメントありがとうございます。非常に参考になりまし、本当にありがたい限りで回答いただいた皆様と、掲示板の運営者に感謝します。
すでにRubyを先ほど発注したので、心強いプロトコールおよびコメントをいただけて非常に有難い限りです。Cell Cycleの件、非常に大事な問題だとおもいます。もしかしてDNA結合タンパク質とDNAの結合を阻害するためにそのようになるのだとしたら、使用に大きな注意が必要かもしれませんが。(目的タンパク質の転写抑制など)しかし現状我々はおもにイメージングツールとして使用するのでおおきな問題にならないかもしれません。
またHoechst33258の情報有り難うございます。赤蛍光で試してみたかったのもあるので、DyeCycleRubyを試して目的(生体イメージング)に合わなければ、試してみたいと思います。

>DNAにこれらの色素が入ったからなのか、それともイメージングによってDNAにダメージが入って止まったのか、どちらか分かりませんが。

この問題は確かに難しいですよね。Fucciプローブなどでご確認した結果でしょうか?われわれもこの問題は真剣に取り組まなくてはならないので、何か分かりましたらこちらからも情報発信しますので、今後ともよろしくお願いいたします。
      
   本文引用
14 筑波大学  三輪研  三輪佳宏 DNA染色の細胞周期への影響について 2012/04/26
青木さま

> あとは、Hoechst33258は生細胞できれいに染まります。赤蛍光ではなく青蛍光ですけど。ちなみに、DyeCycleRubyもHoechstも高濃度で染色すると細胞周期が止まるようです。DNAにこれらの色素が入ったからなのか、それともイメージングによってDNAにダメージが入って止まったのか、どちらか分かりませんが。

経験的には、Hoechst染色すると、DIshの中の細胞全部に影響しているように思います。
顕微鏡で観察しているのは、その中のごくごく一部に過ぎませんので、どちらかというと
DNAに色素が結合していることそのものの影響かもしれないと思います。

一方で、H2B-GFPなどで観察する際に、あまり強い光を当てすぎると、M期が長くなったり
場合によっては分裂をやめて元に戻ることも経験があるので、イメージングそのものに
よるダメージも撮影方法によっては、十分にありえると思います。

ひょっとしたら、細胞周期の時期によって影響の違いもあるのかもしれません。
なにしろ染色は済んでいて、見てみるだけなので(笑) 染色後の経過を追ってみると
何かわかるかもしれませんね。特に、DyeCycleと一口に言っても、色の種類によって
影響が異なる可能性は、十分考えられると思います。

参考になれば幸いです。
      
   本文引用


Copyright 「細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング」事務局