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PubMedID 22543348 Journal Nat Methods, 2012 Apr 29; [Epub ahead of print]
Title A simple, versatile method for GFP-based super-resolution microscopy via nanobodies.
Author Ries J, Kaplan C, ..., Eghlidi H, Ewers H
理化学研究所 免疫・アレルギー 免疫シグナル研究グループ  斉藤隆研    横須賀忠     2012/05/14

ラクダの抗体を用いて簡便にGFP融合蛋白の空間分解能をあげる方法
これまでの報告から機能的に正常なGFP融合蛋白が多く知られていること、GFP融合分子のライブラリーやノックインマウスも存在することから、これらを用いて簡便に観察標的分子の空間分解能をあげることは出来ないか。著者らは、ラクダ由来の抗GFP抗体に注目しました。ラクダの抗体は技術的に13 kDaまで小さくすることが可能で、機能的に最小の分子はNanobodyと称されています。Alexaなどの蛍光化学物質で標識した抗GFP nanobodyで、細胞に導入したGFP融合蛋白を染色・観察すると、FWHMが2倍程度小さくなるようです。具体的には、TubulinでMicrotubuleや、核膜孔の構造蛋白Nic96で核膜孔を、COPIIのサブユニットSec13でTrans-golgi networkのCargo vesicleを、Septin Cdc11で細胞分裂の裂け目などを観察し、GFP融合蛋白のみの場合と比較、nanobodyを使用した場合、見えない構造が見えてくることを強調しています。

GFPを抗GFP nanobodyで染色するよりも、抗Flag nanobodyなどを用いた方が有用かと思いますが、ラクダに免疫するのは敷居が高いのでしょう。抗GFPおよび抗RFP nanobodyは容易に購入できるようです。

さて、ラクダの抗体とは何か、です。ご承知の通り、免疫グロブリンIgGはIgドメイン4個からなる重鎖と、2個からなる軽鎖が2本ずつ結合していますが、ラクダやラマなどのラクダ科の動物の血中の免疫グロブリンの半分は、重鎖2本からなるものだそうです(Nature, 1993, 363; 446-448)。軽鎖がない分、重鎖の超可変領域CDRが長く、抗原への親和性を補っており、ヒトIgGと比較しても遜色ありません。さらにラクダの重鎖はV領域がIgドメイン1個、C領域がIgドメイン2個からなっており、Fabのように切断していきますと、Igドメイン1個分の13 kDa(nanobody)のみが残ります。IgG 150 kDa 100 nmに対し、Nanobodyは1.5 x 2.5 nmと小さいため、細胞間の隙間や、細胞内オルガネラ、酵素の活性中心に容易に入り込むことができます。細胞内に発現させ、中和抗体のように特定に分子の機能を阻害することもできますし(Nat Biotechnol, 2003, 21; 77-80)、ウイルス感染をブロックするようなツールとして臨床応用が進んでいます。実験的には、細胞壁の処理無しで酵母の細胞内染色が出来るそうです。また、Nanobodyには、IgGの重鎖と軽鎖の間に存在する疎水性アミノ酸配列がなく、ジスルフィド結合もないため、熱やpHに強く、微生物や培養細胞内で容易に合成が可能です。GFPタブを負荷したNanobody(choromobody)を細胞に発現させることで、細胞内の分子の挙動を観察したという報告もあります(Nat methods, 2006, 3; 887-889)。既にラクダの重鎖抗体のライブラリーが存在するそうですので、応用範囲は広いと感じました。
   
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1 理化学研究所 免疫・アレルギー 免疫シグナル研究グループ  斉藤隆研  横須賀忠 追伸 2012/05/14
3/12に本蔵直樹先生が投稿された論文22157958も同じラクダ抗体を用いていました。
      
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