PubMedID | 22622571 | Journal | Nature, 2012 May 24;485(7399);471-7, |
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Title | Brain-wide neuronal dynamics during motor adaptation in zebrafish. | ||
Author | Ahrens MB, Li JM, ..., Engert F, Portugues R |
神経科学の目標のひとつに、神経回路全体の活動を捉えることが挙げられます。本論文では、ゼブラフィッシュの脳の全ニューロンのカルシウムイメージングを行うことで、視覚フィードバックによる運動出力の制御とその運動適応について解析しています。
脳にGCaMPを発現させたゼブラフィッシュに麻酔をかけ、視覚刺激を与えた時の神経活動を、2光子顕微鏡を用いて測定しました。イメージングはz軸方向にセクショニングしながら行われ、組織の形態からスコアを算出し、最もスコアが近いイメージングプレーンをスタックしていくことで、x, y, z軸のポジショニングをしました。これにより、脳全体をスキャンしながら、単一の神経細胞レベルでイメージングすることが可能となりました。実験結果から、視覚刺激に対する運動応答および視覚フィードバックに関与するニューロン群の分布が把握でき、脳の下オリーブで視覚フィードバックと運動出力を統合し、運動適応を引き起こしているのではないかということが示唆されています。
今回開発された測定系を用いれば、脳における感覚入力や運動出力の情報処理を統合的に理解することができると考えられます。さらに、神経回路全体の活性動態を同時に観察できるので、様々な研究に応用が可能なのではないでしょうか。
1 | 国循・細胞生物学部 望月研 福原茂朋 | 紹介有難うございます | 2012/06/19 |
ご紹介有難うございます。
今回紹介頂いた論文で重要なのは、脳全体における神経活動を、単一の神経細胞レベルの解像度で解析できた点だと思います。 これは、行動と神経活動の関係を解析することを可能にする有用な技術だと思いました。 これまでの神経のイメージング解析には、脳のスライスを用いた方法や二光子顕微鏡を用いて生きたままの動物の脳をイメージングする方法があるようですが、 前者は生理的な条件ではなく、後者については生理的な条件ですが、多くても数百個の神経細胞しか観察できず、脳全体の神経活動を観察することが出来ませんでした。 今回の論文は、胎生期に胚が透明で、個体も小さく、また遺伝子操作がしやすいというゼブラフィッシュの利点を最大限に生かしたものであり、 マウスでは難しいけれど、ゼブラを使えば調べられるかもしれないことが、まだ色々とあるのではないかと思います。 ちなみに昨年、遺伝研の川上先生も運動神経特異的に改良型GCaMPを発現するゼブラフィッシュを樹立し、脊髄運動神経回路の活動パターンを解析した論文を報告されていました。 Muto et al. PNAS 108: 5425-5430, 2011 |
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