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PubMedID 22734946 Journal J Am Chem Soc, 2012 Jun 26; [Epub ahead of print]
Title Organelle-Specific Detection of Phosphatase Activities with Two-Photon Fluorogenic Probes in Cells and Tissues.
Author Li L, Ge J, ..., Xu QH, Yao SQ
京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻  励起物質化学研究室    田邉一仁     2012/07/11

細胞内ホスファターゼを可視化する分子プローブ
Yao, S.らは、細胞内のPhosphatase活性を可視化する分子プローブを報告しています。リン酸部をもつ色素の蛍光発光が、酵素による加水分解により、増強されることを活用しています。このストラテジーは、これまでにも報告されていましたが、この論文ではプローブ分子を細胞内の特定部位に集積させ得る機能分子(オリゴペプチド)で化学修飾しており、それぞれの器官における酵素活性を個別に可視化できるように改良しています。具体的には小胞、細胞膜、ミトコンドリアを標的としています。加えて、matrix metalloproteaseに認識されるオリゴペプチドをプローブに修飾し、がん細胞でのphosphataseの検出も述べています。

本論文で述べられたプローブには、光分解型置換基ニトロベンゼン誘導体が細胞透過性向上のために導入されているため、酵素活性の検出前に紫外光を照射する必要があります。このステップは面倒である一方、調べたい時に調べたい部分のみに光照射することによって、任意の場所と時間の酵素活性を調査することができます。この点は、本論文のプローブの良いところかと思います。
   
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1 京都大学生命科学研究科  生体制御学  松田道行 二光子用の色素とは? 2012/07/12
ご紹介ありがとうございます。この論文の売りは、二光子顕微鏡用の蛍光色素を使ってプローブを開発したというところにあるようです。通常の蛍光色素がなぜだめか、というところがいまひとつ理解できなかったのですが、どなたかご教示いただけませんか。脱線しますが、最近、Quantum Dotの話をあまり聞かない気がします。期待したほど広がってこないのはなぜ?
      
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2 京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻  励起物質化学研究室  田邉一仁 二光子励起用の色素について 2012/07/12
松田先生、ご返信ありがとうございます。私の知っている知識のみでお恥ずかしいですが、以下書かせて頂きます。通常の蛍光色素でも二光子励起を用いて発光させることは可能ですが、励起効率が悪いようです。この効率は一般的に二光子吸収断面積(δ)で表され、通常の色素(フルオレセインなど)と比べると、二光子励起用の化合物は10倍以上大きな値を持ちます。この効率を良くするために色々な手法がとられ、様々な化合物が開発されています。一般的には、π共役系の拡張や電荷移動を起こす分子の導入によって、色素がもつδ値は大きくなる傾向にあるようです。
      
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