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PubMedID 22634730 Journal Nat Neurosci, 2012;15(7);1047-53,
Title pHTomato, a red, genetically encoded indicator that enables multiplex interrogation of synaptic activity.
Author Li Y, Tsien RW
早稲田大学先進理工学部生命医科学科  井上研究室    井上 貴文     2012/07/30

pHTomato, pHluorinの赤バージョンの開発
Dick Tsienの研究室からpHluorinの赤バージョンの報告がありました。pHluorinはGFPのpH感受性を強めた蛍光タンパク質で1998年にRothman研究室から報告され(Nature 394:192-195)、以来開口放出のモニターとして頻用されています。小胞内は酸性なので、小胞内にあるときは蛍光強度が低く、小胞が開口放出して内容が細胞外に露出し、 pHが中性になると蛍光強度が増加する性質をうまく利用しています。ただ、pHluorinは緑色なので他のプローブとの併用に問題があったので、今回新たにmRFPとmStrawberryを元にmutagenesis screeningを行い、550nm励起の580蛍光という赤系のpHセンサーを開発しました。これまでも赤バージョンのpHセンサー蛍光タンパク質は何種類かあったのですが、それらにあった問題を解決してpHluorinとほぼ同等の性能が出せるとのことです。これをシナプス小胞に局在するsynaptophysinと融合して、シナプス小胞放出センサーとしてsypHTomatoを作りました。これをGCaMP3とともに培養神経細胞に発現させて、シナプス終末のカルシウム変化と放出量を比較したり、プレシナプスの放出とポストシナプスのカルシウム変化を直接比較した例を示しています。さらにoptogeneticsと組み合わせて、プレシナプスの刺激を2系統(channelrhodopsin-2あるいはVChR1)用いて、カルシウム測定(GCaMP3)および小胞放出(sypHTomato)を同時にcross talkなしでモニター出来ることを示しています。

この論文では培養神経細胞を使っていますが、スライスあるいはin vivo脳標本での高精度なシナプス放出+プレシナプスあるいはポストシナプスのカルシウム変化のモニターが期待出来そうです。
   
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1 京都大学 生命科学研究科 生体制御学分野  松田道行研  後藤 明弘 RFPバージョンの開発 2012/08/15
ご紹介ありがとうございます。
素人で恐縮なのですが、コメントさせていただきます。
プレシナプスの放出とポストシナプスのカルシウム変化を同時に記録できるのは非常に画期的だと思いました。
また、同じポストシナプウスに投射しているプレシナプス同士が近似したvesicle poolを有しているというデータは面白いと思いました。筆者の主張通り、ポストシナプスからのフィードバックがあるのであれば、やはりvivoでそれを検討できたら面白いと思いました。シナプス間のやり取りは培養下とvivoでは大分違いそうなので。
RFPに変異を入れることで、GFPバージョンとほぼ同等の性能のセンサーがつくれたというのは個人的には驚きでした。同じ戦略で、G-CaMPのRFP版、作れないのかなと思いました。シナプス小胞を見たい人は限られますが、Caをみたい人はたくさんいると思います。G-CaMPのRFP版ができれば、これまでの様々なセンサー+Ca濃度が一気に実現できると思いました。今回の論文では、キットを使って、3回PCRをしています。毎回300のコロニーをつついて、最終的に600近いクローンの性能を評価しています。かなりしんどそうですが、G-CaMPのRFP版をこれでつくれないのかなと思いました。
      
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2 東京医科歯科大学、医歯学総合研究科  寺田研究室  齊藤健太 R-GECOでしょうか 2012/08/20
後藤様

レスポンスが遅くなってすみません。
G-CAMPのRFPバージョンというと、去年出たR-GECOでしょうか。
(An Expanded Palette of Genetically Encoded Ca Indicators, Science, 2011)
筆者らはコロニーを拾わずに、プレート上でスクリーニングできるユニークな方法を開発し、色変異体のみならず多様な指示薬を報告しています。
pHTomatoもこの方法でスクリーニングをかけたのかと思っていたのですが、違ったようですね。
      
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3 京都大学生命科学研究科生体制御学分野  松田道行研  後藤明弘 ありがとうございます 2012/08/23
齊藤様

お知らせいただきありがとうございます。
pHluorinのRFP版を作ることで開口放出とカルシウムの同時イメージングか可能になったという趣旨の論文かと思いましたので、当然GCaMPのRFP版はないものと思っていました。開口放出とカルシウムの同時イメージング自体は従来の技術でも可能であったということですね。いずれにしても、開口放出とほかの現象(カルシウム以外)を同時モニターするのに今後有用なセンサーを開発したということになりそうですね。
      
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