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PubMedID 22854777 Journal Nature, 2012 Aug 1; [Epub ahead of print]
Title Defining the mode of tumour growth by clonal analysis.
Author Driessens G, Beck B, ..., Simons BD, Blanpain C
京都大学医学研究科病態生物医学  松田研究室    平塚 徹     2012/08/09

皮膚癌内の細胞のlineage tracing
タモキシフェン誘導性に皮膚細胞にYFPを発現させられるマウスに発癌剤を塗り皮膚癌を誘導しています。タモキシフェン濃度をうまく調整することで癌の中でシングルセルレベルで細胞を標識できるようです。
さらにタモキシフェンをうってからの時間を3日から60日まで変え、標識されたクローンの大きさを調べ、腫瘍細胞を増殖能から2つに分けています。1つは腫瘍内に長くとどまりstem cell様で増殖能がたかいもの、もう1つは分化した細胞をつくる増殖能が低いものであり、前者がcancer stem cellであると結論付けています。

BrdU,EdUの取り込み実験や、数理モデリングで補強をしていますが、cancer stem cellの存在を腫瘍内で直接示したというには無理があるのではないか、というのが率直な感想です。

ただ、
1.シングルセルからのlineage tracing
2.イメージングデータからの数理モデルの構築、解析
3.そのデータから新しい知見を導き出す
という流れはきれいで非常に興味深いものがありました。

数年前に正常の皮膚を用いて同様の実験をした論文がありましたが(Nature 446, 185-189 (8 March 2007))、今後もこのような研究が様々な分野の研究で広がる可能性があると思います。特に数理モデルは個人的になじみがないのですが、今後重要性が増すのではないかと思いました。
   
   本文引用

1 名古屋大学医学部細胞生物学  宮田卓樹研究室  榊原明 タモキシフェン濃度 2012/08/10
> タモキシフェン誘導性に皮膚細胞にYFPを発現させられるマウスに発癌剤を塗り皮膚癌を誘導しています。タモキシフェン濃度をうまく調整することで癌の中でシングルセルレベルで細胞を標識できるようです。

これに関連して、こちらではマウス胎仔脳にCre依存型発現ベクターで蛍光蛋白質を導入、母体へのタモキシフェン投与後に胎仔脳を固定して蛍光蛋白質の細胞内局在を調べています。タモキシフェンをピーナッツオイルに15 mg/ml(これ以上濃度を上げても溶けない)となるように溶かして0.2-0.3 mlほど母体にi.p.すると蛍光標識された細胞がちらほら、しかし、調子が悪いと殆ど光らないため、もう少しタモキシフェンの効きを良くしたいと思っています。とても良く効くと噂の4-ヒドロキシタモキシフェン(脂溶性のタモキシフェンと違い、水に良く溶けて扱いやすい)の使用も考えたのですが、あまりに高価なのでためらっていたところ、タモキシフェンのクエン酸塩も市販されているという情報を入手しました。どなたかタモキシフェンのクエン酸塩を使っている方おられましたら、コメントいただけると有り難いです。よろしくお願いします。
      
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