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PubMedID 22403384 Journal Science, 2012 Mar 9;335(6073);1194,
Title Fluorescence imaging of cellular metabolites with RNA.
Author Paige JS, Nguyen-Duc T, Song W, Jaffrey SR
東京大学医学系研究科  浦野研     神谷真子      2012/08/21

細胞内代謝物を可視化するRNAセンサー
以前ご紹介した「GFPのRNAミミック(2011/08/22紹介)」の続報が同研究グループから報告されていたのでご紹介致します。前回の報告では、目的RNAにタグとなる“RNAアプタマー(Spinach)”を遺伝子レベルで組み込み発現させ、さらに“そのアプタマーと結合すると蛍光を発する有機小分子(DFHBI)”を用いることで、目的RNAを直接観察するための手法が紹介されていました。

今回の報告で筆者らは、上記のRNAアプタマーSpinachをさらに進化させ、DFHBI結合部位に細胞内代謝物に対する認識部位を組み込むことで、ADP (adenosine 5’-diphosphate)、SAM (S-adenosylmethionine)といった細胞内代謝物を認識して初めて蛍光を発する新たなRNAセンサーの開発に成功しました。

具体的には、Spinachを構成するstem-loopの一つがDFHBIとの結合に必須であることに着目し、このloopを構成する塩基対を置換して結合を弱め、DFHBI添加のみでは光らないように設計しました。さらに、このloopを介して“代謝物が結合するアプタマー”を組み込みました。このようにして開発したRNAセンサーは、はじめはloop構造がrigidでないためDFHBIを添加しても光りませんが、目的の代謝物が存在する条件下では、代謝物がアプタマーに結合することによりloop構造が再構築され、DFHBI存在下で蛍光を発するようになります。このように、目的の代謝物とDFHBIの両者が揃うことで初めて蛍光を発するよう制御されているため、高い感度および選択性を実現することが可能となりました。

さらに筆者らは、開発したRNAセンサーを用いることで大腸菌におけるADPやSAM のリアルタイムイメージングも可能であることを示しています。蛍光蛋白を用いたFRET-basedセンサーではこれらの標的分子に対するセンサーが開発されていないこと、さらに本手法は多種多様な分子を標的にし得るといったRNAアプタマーの利点を生かした手法であることから、今後、生物学に果たす役割・期待は大きくなっていくのではないでしょうか。
   
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1 東京医科歯科大学、神経機能形態学分野  寺田研  齊藤健太 興味深いです 2012/08/24
神谷様

ご報告ありがとうございます。
RNAアプタマーを使う利点としては、今回報告がされている分子以外にも様々な分子をターゲットにできるという所なのでしょうか。アプタマーについては詳しくないのですが、ライブラリか何かがあってスクリーニングするという認識でおりますが、小分子〜巨大分子までほぼ全ての分子をターゲットにできれば良いですね。
作用機序がはっきりしない薬剤や麻酔薬を認識するようになれば、それらの細胞内・個体内動態のイメージングにも使用出来るようになりますよね。
いろいろ応用できそうで面白いと思いました。
      
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