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PubMedID 22961245 Journal Nat Methods, 2012 Sep 9; [Epub ahead of print]
Title Improving FRET dynamic range with bright green and red fluorescent proteins.
Author Lam AJ, St-Pierre F, ..., Tsien RY, Lin MZ
京都大学大学院医学研究科 病態生物医学  松田道行研    上岡 裕治     2012/09/14

Clover and mRuby2
Dr. Michael LinのところからCloverと mRuby2という新しい緑色、赤色蛍光タンパク質が報告されました。
Clover (Ex. 505, Em. 515) Brightness, EGFPの約2倍
mRuby2 (Ex. 559, Em. 600) Brightness, mCherryの約2倍

これらを組み合わせたFRETバイオセンサーはこれまでのCyan-Yellowの組み合わせのFRETよりも優れていると報告しています。実際に当研究室でもRaichu-Ras(142x)で比較したところ、Clover-mRuby2 pairのRaichu-RasのほうがconventionalなCyan-Yellow pairよりもgainで勝っていました。
しかしながら、当研究室が最近報告したEVリンカーを用いた新型バイオセンサー(PMID: 21976697)はClover-mRuby2のFRET pairよりもgainが大きいことがわかり、手前味噌ですが、「EVリンカーの勝ち」かなと考えています。

いずれにせよ、明るい緑色、赤色蛍光タンパク質が次々と開発されて、アプリケーションの幅が広がることはユーザーとしては非常にありがたいことだと思います。例えばCyan-Yellow pair FRETをCLSMなどで観察しようとすると440 nmが必要だったりしましたが、green-red pairであれば基本的に標準搭載されている488 nm laserで観察できることになります。
   
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1 名古屋大学医学部細胞生物  宮田卓樹研究室  榊原明 二光子励起でFRETをするとしたら 2012/09/15
> しかしながら、当研究室が最近報告したEVリンカーを用いた新型バイオセンサー(PMID: 21976697)はClover-mRuby2のFRET pairよりもgainが大きいことがわかり、手前味噌ですが、「EVリンカーの勝ち」かなと考えています。

Clover-mRuby2のFRET pairとEVリンカーを組み合わせれば、さらに良いものが出来そうですね。

> いずれにせよ、明るい緑色、赤色蛍光タンパク質が次々と開発されて、アプリケーションの幅が広がることはユーザーとしては非常にありがたいことだと思います。例えばCyan-Yellow pair FRETをCLSMなどで観察しようとすると440 nmが必要だったりしましたが、green-red pairであれば基本的に標準搭載されている488 nm laserで観察できることになります。

生体内で二光子励起する場合、波長的に使い勝手が良い組み合わせはどちらなのかが気になります。実際に組織でFRETを試みている方のコメントをいただけると有り難いです。
      
   本文引用
2 京都大学大学院医学研究科 病態生物医学  松田道行研  上岡 裕治 2012/09/15
榊原先生
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りで、実は厳密に言うと、EVリンカーありのバイオセンサーをClover-mRuby2 pairとSECFP-YPet pairで今回比較しました。そうするとSECFP-YPet pairのほうがgainが高いことがわかりました。SECFP-YPet pairのほうがEVリンカーに適すると言えます。
EVリンカーなしのClover-mRuby2 pairとEVリンカーありのSECFP-YPet pairはどちらがbetterなのかはまだ調べていませんが、近いうちに報告できるかと思います。
      
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3 国循・細胞生物  望月研  福原 2012/09/15
上岡 さん

紹介、有難うございます。

> おっしゃる通りで、実は厳密に言うと、EVリンカーありのバイオセンサーをClover-mRuby2 pairとSECFP-YPet pairで今回比較しました。そうするとSECFP-YPet pairのほうがgainが高いことがわかりました。SECFP-YPet pairのほうがEVリンカーに適すると言えます。

EVリンカーの効果は、どのドナー/アクセプターペアでも同じというわけではないのですね。ちなみに、Clover-mRuby2 pairのEVリンカーあり、なしでは、EVリンカーありの方が、gainは高いのでしょうか?


      
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4 京都大学大学院医学研究科 病態生物医学  松田道行研  上岡 裕治 2012/09/15
福原先生
コメントありがとうございます。
>EVリンカーの効果は、どのドナー/アクセプターペアでも同じというわけではないのですね。ちなみに、Clover-mRuby2 pairのEVリンカーあり、なしでは、EVリンカーありの方が、gainは高いのでしょうか?

当然の疑問ですよね。
すいません、まだ詳しくは調べていません。
またERK、PKA、低分子量Gタンパク質などのすべてのバイオセンサーでも同じことが言えるか?など調べだしたら論文が書けてしまう(!?)ので、もう少しお待ちください。

ただし、今回の結果はある程度予想されていたので、詳しくは小松君のコメントをお読みください。
      
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5 京都大学生命科学研究科 生体制御学   松田道行研  小松 直貴 EVリンカーに適するドナー/アクセプターペア 2012/09/15
榊原先生、福原先生
上岡さんのコメントに引き続き、私からEVリンカーの効果についてコメントさせて頂きます。
EVリンカーはオワンクラゲ由来の蛍光タンパクを用いたときにその効果が得られます(具体的にはCFP-YFPペア)。ただし、クラゲ以外の生物由来の蛍光タンパクと組み合わせた場合、例えばサンゴ由来のTFPとYFPをドナー・アクセプターとして用いた場合ではEVリンカーの効果は得られませんでした。
この結果とmRuby2がイソギンチャク由来、Cloverがクラゲ由来であることを考えると、Clover-mRuby2ペアではEVリンカーの効果はでないと考えられます。

なお、ドナー・アクセプターペアとEVリンカーの関係について、以下の拙著に詳細を述べております。
よろしければこちらもご参照ください。
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/imaging/forum/thread.php?id=12
      
   本文引用
6 国循・細胞生物  望月研  福原 2012/09/15
小松 さん、上岡 さん

どうも有難うございました。参考になりました。

> 榊原先生、福原先生
> 上岡さんのコメントに引き続き、私からEVリンカーの効果についてコメントさせて頂きます。
> EVリンカーはオワンクラゲ由来の蛍光タンパクを用いたときにその効果が得られます(具体的にはCFP-YFPペア)。ただし、クラゲ以外の生物由来の蛍光タンパクと組み合わせた場合、例えばサンゴ由来のTFPとYFPをドナー・アクセプターとして用いた場合ではEVリンカーの効果は得られませんでした。
> この結果とmRuby2がイソギンチャク由来、Cloverがクラゲ由来であることを考えると、Clover-mRuby2ペアではEVリンカーの効果はでないと考えられます。
>
> なお、ドナー・アクセプターペアとEVリンカーの関係について、以下の拙著に詳細を述べております。
> よろしければこちらもご参照ください。
> http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/imaging/forum/thread.php?id=12
      
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7 理研RCAI  免疫シグナル研究グループ 斉藤隆研  横須賀忠 一分子FRETの基本的な質問 2012/09/17
小松先生、上岡先生
有意義な情報を有り難うございます。
一分子FRETの基本的な質問をさせていただいても宜しいでしょうか。
以前、松田先生からRaichuをいただきました。
抗原刺激したPrimary T cellに発現させて、活性化Rasの局在を観察したいと考えております。
しかし、Electorporationで導入しても、Retrovirusで導入しても、?SECFPのみ発現する細胞、?Venusのみ発現する細胞、?Doubleで発現する細胞が混在します。Doubleで発現している細胞も、SECFPの強度が高い細胞から低い細胞まであり、Venusにしても同じことがあり、両方強い、両方弱い、という訳でもありません。明らかに??は排除するとして、?のDoubleで発現している細胞の中でも、どれを選んでも良いものか、判断が付きません。同一細胞でVenusは細胞膜で、SECFPは核も細胞質も、という細胞も存在しますが、これは明らかにおかしいです。Primary T cellのクローニングは難しく、こういう現象をどう解釈してよいものか、また、どのような細胞を選んでFRET効率を算出すべきなのか、ご助言いただけましたら、助かります。
また、Ras C末の脂質修飾部位の違いによって、T cell内での局在が明らかに異なります。一般的な活性化Rasのマーカーと考えるより、H-Ras、K-Ras、N-Rasの活性化をそれぞれ観るマーカーという印象がありました。
      
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8 京都大学生命科学研究科  生体制御学  松田道行 FRETバイオセンサーの安定発現 2012/09/18
横須賀さん
FRETバイオセンサーの安定発現は通常難しいのです。先生が報告されたようなことが必発です。ではどうすればいいか。
下記論文をご参照ください。
Stable expression of FRET biosensors: a new light in cancer research.
Aoki K, Komatsu N, Hirata E, Kamioka Y, Matsuda M.
Cancer Sci. 2012 Apr;103(4):614-9. doi: 10.1111/j.1349-7006.2011.02196.x. Epub 2012 Feb 3. Review.
PMID: 22188216 [PubMed - indexed for MEDLINE]
      
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9 理研RCAI  免疫シグナル研究グループ 斉藤隆研  横須賀忠 Review論文 2012/09/18
松田先生
承知致しました。
もう少し手を動かしてみます。
論文ありがとうございました。
      
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