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PubMedID 22053163 Journal Nat Photonics, 2011 Mar;5(3);135-136,
Title IMAGING: Focusing light in scattering media.
Author Konecky SD, Tromberg BJ
北海道大学電子科学研究所  光細胞生理研究分野    根本知己     2012/09/20

高散乱体(生体)中でレーザーはどこまで絞れるのか?
Nature Photonics誌の論文はほとんどPubmedIDを持っていないようですので、紹介したいものとよく似た論文をタグとしました。本来紹介しようとしておりましたは、
Katz, O., et. al. "Focusing and compression of ultrashort pulses through scattering media", Nature Photonics, 5:372-377, 2011
です。最近、2光子顕微鏡のことも念頭に置いて、高散乱体越し(たとえば骨のスライスなど)で超短光パルスレーザー光を絞り込むための技術についての報告が集中して来ており、総説も書かれております。
この論文を含め、基本的には、入射レーザー光に、浜ホトのLCOSに代表されるような波面補正装置を行いて、補正をかけることが行われています。問題は、どのような補正パターンを与えれば良いかということですが、遺伝的アルゴリスムを用いた方法論が良く使われています。

将来、2光子顕微鏡による深部断層イメージングの高度化に寄与する技術であると思いますが、演算量が膨大で実時間性が乏しい、PSFが通常の条件よりも大きいという問題があります。今後のPCの能力の増加や抜本的なアルゴリズムの改善などにより、このような技術が生命科学のユーザーにまで広がることを期待しています。
   
   本文引用

1 京都大学医学研究科 病態生物医学  松田研究室  中正 英二 補償光学系関連の論文 2012/11/06
新しくスレッドをたてようとも思いましたが、根本先生が補正光学系に関するスレッドを投稿していますので、コメントにて論文を紹介したいと思います。

Pubmed ID: PMC3252919
Characterization and adaptive optical correction of aberrations during in vivo imaging in the mouse cortex
Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 January 3; 109(1): 22-27.

本論文も波面補正装置を用いて独自のアルゴリズムで補正をかけているものです。
もちろん、埋め込んだビーズなどで波面の参照にした場合は、埋め込んだ付近の領域では回折限界までPSFが回復するのですが、穴をあけた頭蓋骨にガラスで蓋をし、ガラス蓋直下においたビーズを参照として補償をかけることで、
400um程度の深さ、300-400umほどの実視野、2時間くらい連続観察でも回折限界までとはいきませんが、かなりの回復が見込まれるみたいです。
根本先生が書いておられるように、演算量が膨大になるため今後のPCの能力の増加や抜本的なアルゴリズムの改善が期待されるところなのですが、それまではどこまで時間と画像の美しさに妥協できるかがジレンマとなりそうです。

ちなみに対物レンズでは補正管で球面収差を補正するという機能もついています。

Pubmed ID: PMC2352157
Improving Signal Levels in Intravital Multiphoton Microscopy using an Objective Correction Collar
Opt Commun. 2008 April 1; 281(7): 1806–1812.

この論文などで補正管の効果を評価されてたりするのですが、補償光学系と補正管を組み合わせて検討した方などいらっしゃるでしょうか?
おそらく組み合わせたほうが補正光学系の補正量も小さくすむものだと考えます。
      
   本文引用
2 愛媛大学大学院医学系研究科、分子病態医学分野  今村健志研  今村健志 補正環と補償光学の組み合わせは有効と考えます 2012/11/08
蛍光生体イメージ班では根本先生が補償光学(AO; Adaptive Optics)をおこなっていらっしゃいますが、愛媛大学でもCRESTチームで長波長化とともにAOの検討をおこなっています(チームには根本先生にも参画して頂き、北大とは異なる戦略でAOを検討しています)。特に骨を通したイメージングにおいてはAOが有効と考えます。当然、補正環による球面収差補正は効果は期待できますが、AOによる非対称収差の補正も重要で、補正環と補償光学の組み合わせは有効と考えます。この数年、FOMやPhotonics WestでもAOの発表が見られ、これからますますAOが注目されて来ると考えます。
      
   本文引用


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