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PubMedID 22343342 Journal Nat Methods, 2012 Apr;9(4);396-402,
Title Rapid optical control of nociception with an ion-channel photoswitch.
Author Mourot A, Fehrentz T, ..., Trauner D, Kramer RH
光産業創成大学院大学  光バイオ分野    平野 美奈子     2012/11/26

侵害受容ニューロンの活性のみを制御するphotoswitch
光でニューロンの興奮を制御するツールとして、アゾベンゼンを改変したQAQという特定の光で構造が変わる分子を開発し、痛みを感受する侵害受容ニューロンの活動のみを選択的に素早く制御(抑制)できたという話です。
アゾベンゼンのような特定の波長の光によって構造が変わる有機化合物でイオンチャネルを修飾し開閉を制御することで、ニューロンの活動を制御するといった報告は今までにもありましたが、それらは特定のニューロンを選択することはできませんでした。この論文で紹介されているQAQは、侵害受容ニューロンに多く発現しているTRPV1チャネルを介して膜を透過し、細胞内側からトランス型のときのみ電位依存性チャネルをブロックするという機構で、侵害受容ニューロンの活性のみを選択的に制御するというのがミソです。QAQは膜を透過できないので、他の多くの細胞には影響を与えません。
2007年に報告があった、侵害受容器に発現しているTRPV1チャネルを薬の通り道として用いて、そこしか通ることができないリドカインの誘導体のQX-314とカプサイシン(TRPV1チャネルを開かせる)を一緒に投与することで、侵害受容器のみを特異的に麻痺することができたという研究(Nature. 2007 Oct 4;449(7162):607-10.)を応用した話のようです。ちなみにQAQはQX-314の誘導体です。私はこの話は知らなかったのですが、こちらの話も興味深く感じました。
他にニューロンの活性を抑制するツールとしては、ハロロドプシンなどのオプトジェネティクスのツールが有名ですが、それらはトランスポーターなため、イオンの透過量が少ないというのが問題ですね。私の今までのカリウムチャネルの構造機能相関の研究の知見を応用して、カリウムチャネルに光感受性を持たせた光駆動型カリウムチャネルを作れないかな、と最近考えています。
   
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1 東京医科歯科大学、医歯学総合研究科  寺田研  齊藤健太 ありがとうございます 2012/12/05
平野様

レスポンス遅くてすみません。
アゾベンゼンは前に少しだけ関わったので懐かしく拝見してました。
使ってみて、特定の分子だけに効くように特異性を持たせるのが難しいように思いましたが、報告いただいた論文ではうまく解決できているように思えて非常に興味深かったです。
タンパク質だと局在させたり特異性出しやすそうですが、合成化合物で特異性を出すのに一般的に確立された方法ってあるんでしょうかね。
      
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2 光産業創成大学院大学  光バイオ分野  平野美奈子 コメントありがとうございます。 2012/12/12
齋藤様

お返事遅くなってすみません。
イオンチャネルですと、特定のチャネルに特異的なブロッカーやリガンドを用いてそのチャネルのみに効くように特異性を持たせている報告が多いです。アゾベンゼン+マレイミド基を付加したブロッカーを、チャネルの結合部位(ポア)近くに導入したシステイン残基にリンクさせることで、特定のイオンチャネルの開閉を制御することはできているようです。他の蛋白質が持っているシステイン残基にもブロッカーがくっついてしまいそうですが、そもそもその蛋白質には効かないから気にしていないんでしょうかね。
働きをオン・オフしたい分子の機能を阻害or活性化するような物質が知られていれば、その物質を用いて特異性を出せそうな気はします。そのような報告もすでにありそうですが、ちょっと私はフォローできていません。。
      
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