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PubMedID 23219535 Journal Mol Cell, 2012 Dec 5; [Epub ahead of print]
Title Frequency-Modulated Pulses of ERK Activity Transmit Quantitative Proliferation Signals.
Author
理研・脳センター  宮脇敦史研究室    阪上ー沢野朝子     2012/12/16

Quantitative methods によりEGFシグナル伝達経路を理解する
Frequency-Modulated Pulses of ERK Activity Transmit Quantitative Proliferation Signals.
Albeck JG, Mills GB, Brugge JS.
Mol Cell. 2012 Dec 5.

彼らは、FIREというFra-1の動態をモニターするインディケータを新規作製しました。
EGFシグナル伝達経路を理解するツールとして、ERKの活性化をEKAR-EVで、ERK経路のアウトプットをFIREで、そしてその後の運命(S期への進行)をFucciの1つ、RFP-hGeminin(1/110)で可視化しています。

細胞集団がいかにheteroであるかを痛感しているからこそ、私たちは細胞諸現象を可視化するインディケータを作製しているわけですが、今回の彼らの研究は見事に、EGF刺激後の細胞個々の反応のheterogeneityを説明していると思います。

主に用いているEGF濃度は、20pg/mlから50pg/ml。
EGFシグナル伝達をwestern blottingで見ようと思えば、10ng/mlから100ng/ml用いるのが通常であり、桁が大きく違っています。
彼らの論文本文中に、western blottingのデータはひとつもなく、ライブイメージングでしか理解できない現象を見ています。

日本産インディケータを2つ巧みに使いこなしているこの論文、嬉しいと共に、日本発で出せたならカッコよかったな、、という自戒もこめ、フォーラムにアップいたします。
   
   本文引用

1 京都大学生命科学研究科  松田道行研  青木一洋 自戒 2012/12/18
沢野さん、ご紹介ありがとうございます。

ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、私自信がこれと似たようなことをずっと研究しており、先に出し抜かれたな、という感じで少し傷心しておりました。

まさに、

> 日本産インディケータを2つ巧みに使いこなしているこの論文、嬉しいと共に、日本発で出せたならカッコよかったな、

という感じです。しかも、EKAR-EVを送ったのは私自信ですし・・・色々こだわって、インパクトを上げようとしていたのが良くなかったですね。さくっと出していればよかったです。この辺、バランスがむずかしいですね。

ただし、私の結果と食い違っている部分も多々あり、また自分のデータの方がきっちりしている(と思っている)ので、それほど悲観はしておりません。

さて、コメントですが、

?沢野さんのコメントのように、EKAR-EVの感度について言及がありません。このバイオセンサーは非常に高感度であり、EGF刺激をするとすぐに飽和します(大体、endoのERKが10-20%リン酸化した時点で飽和します)。FQFPを外した低感度型のEKARもあります。こちらのほうがEGF刺激とかamplitudeに関しては適しています。ただし、この論文の様なERKパルスの検出となると高感度型じゃないと見えません。

?ERKパルス発生の分子機構が不明。

?ERKパルスの周波数と細胞増殖の関係ですが、単に相関しているだけで、実際に重要であるかどうかについては検証していません。

?Fra-1がこの細胞で本当にpERKの下流で細胞増殖に効いているのか不明。単なるERKの下流でしかなく、FIREはいわばただのERKレポーターとしてしか使われていない。

?数理モデルもありますが、これはただのhigh passフィルターで、このモデルではERKがずっと活性化していてもシグナルが通ります。つまり、ERKがパルスを出している意義については少なくともモデル上では不明です。

?最後のRbのリン酸化(つまりRポイントの通過)とERKリン酸化、cFosが相関しない、というデータはかっこいいですね。ERKをがっつり止めないといけない(ある閾値みたいのがある)のか、それとも他の経路が補っているのか。

全体的に批判的なコメントになってしまいましたが、イメージングの強みを活かした良い論文だと思いました。私の論文では、上述のコメントの問題点について回答を与えたいと思います。

ご参考までに。

青木
      
   本文引用
2 理研 脳センター  細胞機能探索技術開発 宮脇敦史研究室  阪上ー沢野朝子 期待 2012/12/20
青木さん コメントありがとうございます。
青木さんもこのような仕事をされていたのですね。把握出来ていませんでした。

その後メソッドなどを見てみると、彼らはFRETの計算を Donor/Acceptor で行っているのですね。 私は、やはり FRET/Donor のイメージングを行い、FRET, Donor それぞれのチャンネルのトレースが鏡像になるのを見たいのです。 今回のEGFの超低濃度の際に見えるEKAR-EVのパルスが本当にFRETなのか? とても興味があります。 また、Donor/Acceptor の計算で本当に大丈夫なのか?も気になるところです。 いずれにしても今回示されたデータを基本に、彼らが次にどのような展開をはかるのか!です。 私も追いつきたいと思います。

青木さんの回答となる論文、期待して楽しみにしています。

沢野
      
   本文引用


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