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PubMedID 21822256 Journal Nat Biotechnol, 2011 Aug 7; [Epub ahead of print]
Title Quantitative fluorescence imaging of protein diffusion and interaction in living cells.
Author Capoulade J, Wachsmuth M, Hufnagel L, Knop M
京都大学生命科学研究科高次生命科学専攻  松田研    定家和佳子     2011/08/20

Light sheetとEM-CCDを使った二次元FCSイメージング
蛍光相関分光法 (FCS) は、極微小な領域を出入りする蛍光分子の蛍光強度を測定する手法です。FCS法により、分子の濃度や拡散速度などの情報を知ることができます。しかし、現状多く使われているFCS法では(1)共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内の1点の情報しか同時に測定できないこと、(2)焦点外も照明してしまうため退色が起きやすいこと、の2点の問題がありました。
この論文では、これらの問題を解決し、FCS (蛍光相関分光法) 測定を行う手法を紹介しています。光学系は、回折限界まで絞った光シート(Light padと呼んでいる)を斜めから対物レンズを通して細胞に照射し、出てくる蛍光を斜めに設置した対物レンズを通してEM-CCDカメラで取得する、というものです(Fig. 1)。CCDで検出するので、FCS解析を2次元で行うことができます。この系を使って、3T3細胞の核内におけるHP1α-EGFP(ヘテロクロマチン結合タンパク質)の二次元FCS解析し、拡散速度の核内分布を画像化しています(Fig.4)。結果を見ると、HP1αの拡散時間の違いとヘテロクロマチン、ユークロマチンの局在の違いとがほぼ一致しており、うまくワークしているように思いました。細胞内でのタンパク質の挙動の違いを観察できる点で興味深い方法だといえると思います。
問題点を1点挙げるとすれば、この方法はEM-CCDを用いているため、汎用のFCS解析と比べて時間分解能が非常に劣るということです。例えば、Z社のFCS顕微鏡では、sampling rateが0.1usくらい、O社のものでも、2usくらいですが、この論文では、2次元FCSだと700usくらい、1次元FCSにしても40usくらいです。これくらいのsampling rateだと、拡散の早い分子では正確に濃度と拡散速度を相関関数から求めることができなさそうです。実際、Fig. 2hを見てみるとかなり無理にfittingして求めているような気がします。Raster image correlation spectroscopy (RICS) でも拡散速度の分布を求めることができますが、それとの比較はありませんでした。また、この系でFCCSができると、細胞内のどの場所で分子がどれくらい結合しているか、調べることが可能になりそうだと思いました。
   
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