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PubMedID 21798953 Journal Science, 2011 Jul 29;333(6042);642-6,
Title RNA mimics of green fluorescent protein.
Author Paige JS, Wu KY, Jaffrey SR
東京大学医学系研究科  浦野研    神谷 真子     2011/08/22

GFPのRNAミミック:生細胞で標的RNAを蛍光可視化する新しいRNAラベル化法
GFPを用いた“蛋白”ラベル化技術の誕生によって様々な生命現象が明らかになったことは周知の事実だと思います。一方で、蛋白同様、様々な生命機能を担う“RNA”の働きを直接観察するための技術も求められていましたが、GFPに匹敵する使い勝手の良い手法はありませんでした。

本論文では、目的のRNAに タグとなる“RNAアプタマー”を遺伝子レベルで組み込み発現させ、さらに “そのアプタマーと結合すると蛍光を発する有機小分子”を用いることで、目的RNAの蛍光可視化を実現しました。

ここで重要なのは、如何に“特異的に”蛍光ラベル化するかです。アプタマーと結合して蛍光を発するけれども、目的以外のRNAやDNAなどと結合しても蛍光を発するような分子では使い物になりません。そこで筆者らが着目したのが、GFPの蛍光団の性質です。GFPの蛍光団である4-Hydroxybenzlidene imidazolinone (HBI)は、GFPタンパク内では分子内異性化が抑制されるため蛍光を発しますが、蛍光団だけを取り出してきても蛍光を発しません。そこで筆者らは、HBIの誘導体をいくつか合成し、それらと結合してその蛍光性を回復するようなRNAアプタマーを選別しました。Spinach と命名されたRNAアプタマーはHBI誘導体(DFHBI)と結合することで、EGFPに劣らぬ蛍光強度(明るさ)と、EGFPやfluoresceinに比べ顕著に強い光褪色性を示します。このSpinachと基質を用いることで、生細胞において目的のRNAのみを特異的に蛍光可視化することができました。さらに、RNAアプタマーとHBI誘導体の組み合わせにより、様々な波長の蛍光を発するため、RNAのマルチカラーラベリングが可能になること、Spinach と基質は瞬時に反応して蛍光を発するため、GFP類のように蛍光団が形成されるまでの時間が必要ないことも大きな特徴と考えられます。

このように、本手法はRNAダイナミクスを解析するための新しい蛍光ラベル化技術としての可能性を大いに秘めており、今後の発展に期待したいと思います。
   
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1 京都大学生命科学研究科  生体制御学  松田道行 DFHBIは手に入ります? 2011/08/22
すばらしい。RNAの可視化は今後、発展が期待される分野だと思います。当面の問題の一つは、このDFHBIは簡単に手に入るのでしょうか?ちょっと試してみたいという人は多いと思います。合成屋さんなら簡単に作れるようなものでしょうか。もう一つは、感度でしょうね。mRNAのコピー数は決して多くはないから、見たいものが見えるかどうか。でも、これは、Spinachの配列をマルチコピーにすればなんとかなるような気もします。論文の図で使っているは5S RNAとかではなくて、細胞内特異性が知られているmRNAあたりにしてくれたらと、使えそうかどうかの見当がついたとは思います。
      
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2 京都大学大学院薬学研究科  病態機能分析学分野(佐治研究室)  天満 敬 横から失礼いたします 2011/08/24
DFHBIの合成しやすさですが、サポーティングにしっかりと合成法が書かれていますので、ちょっと経験があるくらいの方なら簡単に作れるのではないかと思います。
オーバーナイトで加熱還流ということもなく、カラムでの精製もいらないようですので、簡易な合成設備があれば十分合成出来そうです。
合成専門の研究室でなくても大丈夫なレベルだと思いました。
      
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3 東京大学医学系研究科   浦野研   神谷 真子 2011/08/27
天満先生、有難うございます。天満先生のおっしゃる通り、DFHBIを含むHBI誘導体は簡単に合成することが出来ます。(DFHBIの場合、Supporting Scheme 3の原料を合成するステップを含めて、3ステップでしょうか。)

個人的に気になった点としては、Spinachのサイズがあまり小さくないので(〜80 nucleotide)、例えば短いRNAにつけた時にその機能が阻害されたりしないでしょうか。
また、松田先生のご指摘にもありました感度に関してですが、親和性(Kd=400-500nM)の観点からも最適化が可能だと考えられ、今後高親和性のアプタマーが開発されれば、さらに使いやすい手法になるのかもしれません。
      
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