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PubMedID 24096363 Journal Nat Struct Mol Biol, 2013 Oct 6; [Epub ahead of print]
Title Live visualization of chromatin dynamics with fluorescent TALEs.
Author Miyanari Y, Ziegler-Birling C, Torres-Padilla ME
IGBMC (France, Strasbourg)  Maria-Elena lab    宮成悠介     2013/10/09

ゲノムイメージング
領域メンバーではありませんが、領域で配布されているH2B-tdiRFP(実際には名古屋大の榊原様よりH2B-iRFPを分与していただき、H2B-tdiRFPに改変して使用しました)を使った論文が出たので、御礼と共にご報告させてください。

最近、TALENとして話題になっている人工DNA結合タンパク質 TAL effectorを使って、核内のゲノム動態をイメージングするTechnical reportです。本研究では、生きた細胞で核内のゲノムの「動き」を見たいということで、TALEにnucleaseではなくmCloverを融合しました。ここでは、ゲノムの様々なリピート配列に対するTALE-mCloverをデザインし、それらの核内動態を生きた細胞で可視化しています。また1塩基置換(SNP)を認識することによって、父方と母方の染色体を異なる色(mClover & mRuby2)でトラッキングすることもできます。以下、movieのリンクです。
http://www.nature.com/nsmb/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nsmb.2680_SV5.html

論文で使われたプラスミドは全てAddgeneに落としました。分野を問わず、多くの研究者の方々に使用していただきたいと思っています。ちなみに、この手法はTGV(TALE-mediated Genome Visualization)と名付けました。フレンチ新幹線です。

最近、TALENだのCRISPRだの、人工DNA結合タンパク質が紙面を騒がせていますが、本当にworkするのか???と疑っていらっしゃる方も少なくないのではと想像します。ゲノム編集だけでなく、TALEを使ったアプリケーションは様々ですので、この論文がTALENやCRISPRを試してみるキッカケになれば、幸いです。

最後に、松田先生、領域で配布したiRFPを使わせていただき、有り難うございました。

   
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1 京都大学・生命科学研究科    松田道行 Re:ゲノムイメージング 2013/10/09
おめでとうございます。こういう使い方もあったのですね。来年のノーベル賞はTalenかもと思いました。感度がどこまで上がるか楽しみです(シングルコピーが検出できれば最高ですけど)。マウスの解析は続報ということでしょうか。EGFRのように癌で増幅する遺伝子のプローブを作ってくれたら欲しいなー。
      
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2 名古屋大学医学部細胞生物  宮田卓樹研究室  榊原明 Re:Re:ゲノムイメージング 2013/10/09
ご無沙汰しています。
名古屋大学、榊原です。
宮成さん、論文発表おめでとうございます。

> EGFRのように癌で増幅する遺伝子のプローブを作ってくれたら欲しいなー。

これに関連して気になったことが二つあります。
コメントいただけると有り難いです。

宮成さん:TGVでは何コピーくらいから検出可能なのでしょうか?
松田先生:EGFRの癌での増幅はどれくらい増えるのでしょうか?おそらくバラツキがあるのではないかと思いますが、何コピー以上になると癌に(なりやすく)なるといった増幅数と癌化の相関について、どれくらいわかっているのでしょうか?
      
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3 京都大学・生命科学研究科    松田道行 Re:Re:Re:ゲノムイメージング 2013/10/09

EGFRのamplificationは30年くらい前にやられ始めました。そのころは20-30コピーと言っていたようです。pubmed/3380099
最近のデータは不勉強で知りませんがそんなには変わらないのでは?Mycなどでは100copyを超える例もしばしばあります。
コピー数と悪性度は相関するとされています(少ないのと多いのの違い、という程度です。一次関数でかけるようなものではもちろんないです)。
      
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4 大阪大学・微生物病研究所  伊川研  佐藤裕公 Re:Re:Re:Re:ゲノムイメージング 2013/10/09
大阪大の佐藤です。お世話になっております。

TGVイメージング、素晴らしいですね。私は未受精卵にmRNAを入れて卵の初期発生を見ているので、とても楽しく拝見しました。どのくらいのコピー数で見えるのか、私もとても興味があります。

少しそれますが、ウチの研究室では今CRISPRの大ブームで、すっかりESを触らなくなりました(汗)。
先日CRISPRでKOした時はコンストラクトの設計をしてから40日後にはホモKO個体が取れていました。恐ろしいくらいです。
また、CRISPRは両末端からターゲットを決めてDouble Strand Breakを起こすTALENに比べてoff-target活性が問題視されていましたが、今のところウチではかなりの特異性が見られています。発展もものすごく速く、cas9のcis/transのゲノム切断部位もわかっているため、single strand breakを起こさせるTALEN様に使えるタイプや、活性が全くなくてRNAi様に使えるCRISPRi、なんかも続々発表されていて、うちでも入手しました。
これならもCGV?のように使えるかな?と想像していました。

皆様にも、CRISPRでKO個体作製に挑戦される際にはぜひお手伝いさせていただきますので、お声掛けいただければ幸いです。
      
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5 IGBMC (France Strasbourg)  METP lab  宮成悠介 Re:Re:Re:Re:Re:ゲノムイメージング 2013/10/09
皆様、コメントありがとうございます。

TGVの系では、結合していなTALEの蛍光がバックグラウンドとなります。シングルコピーを検出する為には、複数の蛍光TALEを1つのローカスにターゲットするというのが、1つのアイディアです。何コピーのリピートが必要か、あるいは1コピーを検出するのに何個のTALEが必要かというご質問に対する答えは、残念ですが持っていません。
TALEがどのくらい効率よくターゲット配列に結合できるかが鍵となるのですが、TALEのクロマチンへの結合様式、またその効率はまだよく分かっていません。

参考までに、LacR-GFPの系では、100~コピーのLacO配列が必要です。RNAを検出するMS2等のシステムでは30~コピーのMS2配列が必要です。
現在、ユニークなローカスを検出できるよう、系を改良している最中です。

CRISPRでのゲノム編集に関しては、良い噂をよく耳にしますね。
      
   本文引用
6 名古屋大学医学部細胞生物  宮田卓樹研究室  榊原明 Re:Re:Re:Re:Re:Re:ゲノムイメージング 2013/10/09
松田先生、宮成さん

早速、ご返答くださり有り難うございます。

> シングルコピーを検出する為には、複数の蛍光TALEを1つのローカスにターゲットするというのが、1つのアイディアです。

なるほど。

> 参考までに、LacR-GFPの系では、100~コピーのLacO配列が必要です。RNAを検出するMS2等のシステムでは30~コピーのMS2配列が必要です。
> 現在、ユニークなローカスを検出できるよう、系を改良している最中です。

色々と工夫すれば、20-30コピー程度の癌での遺伝子増幅を検出することにも十分利用出来そうですね。今後の発展を楽しみにしています。
      
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