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PubMedID 23877069 Journal Nature, 2013 Aug 22;500(7463);472-6,
Title Optical control of mammalian endogenous transcription and epigenetic states.
Author Konermann S, Brigham MD, ..., Church GM, Zhang F
大阪大学・微生物病研究所  伊川研    佐藤裕公     2013/10/28

LITE system: 光刺激による任意の遺伝子発現
このLITE systemは、zinc finger proteinによるLITEZの発展形で (1)TALE+CIB1(2)CRY2+VP64という2つのコンストラクトを細胞に導入し、青色光を当ててCIB1-CRY2を結合させることでTALE直下の遺伝子を発現させるという系です。
ZFPと違い、TALEで自由な遺伝子を選べるようになったのが大きな進歩と言えます。

発現は可逆的で、細胞では光照射後30分後に発現上昇が有意になり最大20倍まで上がっています。 アデノ随伴ウィルスで生体脳に遺伝子を導入して刺激を与えた実験にも成功していますが、気になるのは発現上昇が2倍程度にとどまっていることです。後半に改変型のLITE 2.0も登場しますが生体には使われたデータがありませんでした。データがないのはうまくいかないから?かもしれません。

VP64をヒストン修飾酵素に(人工的エピジェネティック制御)、TALEをCRISPRに(より簡易に)、と、改変型もうまくいっています。赤色光依存的に結合するPhyA/B-PIF3/6などの利用も示唆されています。
NLSの位置などが検討された70種類のコンストラクトの図からは、予想通りにはいかなかったことが伝わりました。

顕微鏡下で自分の好きな遺伝子発現をコントロールするオプションとして興味深く読ませてもらいました。
   
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1 国循  望月研  福原 Re:LITE system: 光刺激による任意の遺伝子発現 2013/11/01
ご紹介有難うございます。
光刺激で内在性の遺伝子の発現を制御できる技術、とても興味があります。私たちはゼブラを使った研究をしていますが、生体で光刺激依存的に目的遺伝子の発現を誘導できれば、いろいろなことを調べることができます。

紹介いただいた論文のFig. 1では、この系の有用性を28の遺伝子について解析していますが、ほとんどが2倍程度(20/28)しか発現誘導されていません。クロマチン構造の違いによって、誘導できる遺伝子とそうでない遺伝子があるのかもしれませんが、もう少し改善されると良いと思いました。
逆に、最後にこの系を使ってエピジェネティックを制御するという話がありますが、例えば非神経細胞にこの系を使って神経分化を誘導する遺伝子の発現を誘導し、神経分化が誘導できたら面白いと思いました。
      
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2 大阪大学・微生物病研究所  伊川研  佐藤裕公 Re:Re:LITE system: 光刺激による任意の遺伝子発現 2013/11/02
福原先生
コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、この系は発現誘導の弱さに改善の余地があると思います。

前作のLITEZの論文(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22963237)では、外来遺伝子としてZFPの認識配列を増やしたものを導入して発現率を上げていたので、内在遺伝子の発現を増やすには、TALE認識部位を複数指定したら効果あるかも?と想像していました。

この点、CRISPRs systemに換えると認識部位のgRNAを複数指定するだけでいいのでデザインしやすいな、、、と考えていたところ、そんな論文が出ていました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23892895)。本当に日進月歩ですね。
これは初めにLITEZを報告したGerbachらの論文で、”DNA切断活性のないcas9に直接VP64をつないで、任意のDNA配列の下流をactivateした”という論文ですが、gRNAの認識部位を複数組み合わせることで発現量が上昇しています。

最初紹介したLITE systemにこのコンセプトを加えることで誘導量は改善させられるかもしれません。

ただし、この変異cas9は従来の遺伝子発現に影響を与えることが知られているので、デザインにはその辺の配慮が必要かと思われます。
また、最後の論文でも、上がっていないものは大して上がっていません(〜2倍程度)。この辺はやはりクロマチンの構造などが影響しているものと想像しています。
      
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