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modified   2013-06-11


----  ----    飯村忠浩     2012/04/19

IMARIS(Bitplane)を用いた、骨細胞ネットワークの3次元形態計測
骨細胞は、石灰化した骨組織中にあるいわば星型の細胞で、骨基質中で細胞突起を伸ばし細胞間ネットワークを形成しており、骨を構成する細胞の90-95%を占める最も多い細胞集団である。(組織学の教科書等では、ぞんざいに扱われていることが多いが)骨細胞は骨へ伝わった機械的負荷を感知し、骨芽細胞や破骨細胞に細胞ネットワークを介して情報伝達し、骨代謝を調節している。さらに、リン代謝調節ホルモンであるFGF23を分泌し、血中リンレベルの調節に重要な役割を担っている(骨の領域では最近流行の細胞である)。
骨細胞がどのようにして、機械的負荷を感知するかについては不明な点が多い。もっとも良く受けいれられている流体剪断応力(ずり応力)モデルでは、骨に加わった機械的負荷によって生じた骨細管ネットワーク内の間質の微細な流れの変化が細胞膜で感知され、細胞突起内の細胞骨格の変化として細胞内に伝わると考えられている。骨格系の構造は、機械的負荷に反応して発達し、骨梁構造や骨細胞の配列も機械的負荷に対応している(かのように見えることがしばしばある)。したがって、骨細胞を対象とした3次元形態計測は、骨細胞の生理的機能や病態変化を知る上で極めて重要であると考えられる。
8週齢の雄マウスより、頭頂骨と脛骨を採取し、固定、脱灰の後、凍結切片を作成した。
細胞質および細胞突起を緑の蛍光で、細胞核を赤の蛍光で可視化するため、f-actinをAlexaFluor 488Phalloidin (A12379,Invitrogen)で、核を BOBO-3 iodide (570/602)(B3586, Invitrogen)でそれぞれ染色した。蛍光シグナルの観察は、共焦点レーザー顕微鏡Pascal5 (Zeiss)で行った。対物レンズは、PlanFluor (N.A. = 1.4) x63 (Zeiss)を用いた。緑色励起および赤色励起は、それぞれMulti-Argon レーザーで488nm、HeNeレーザーで543nmの波長で行った。緑色蛍光および赤色蛍光は、510-530のバンドパスフィルター 560-のロングパスフィルターで取得した。PMTのピンホール設定は、1AU(にした。プロジェクション(投射)像の作成および3次元立体画像の構築のため、0.29 micro-m間隔の光学切片を数枚取得し、IMARISで画像処理を行った。
 FilamentTracerによる細胞突起の計測の際に、Endo Point(終末点)の設定が大切なファクターだと思われた。終末点の直径のサイズを0.2-0.3micro-mに設定した場合、より詳細な樹状モデルを描けたが、計測値にはかなりの誤差が含まれていると考えられた。これは、プログラム上、微細な蛍光シグナル間を細胞突起としてつないでしまうことや、細胞体表面の微細な突起用構造をも細胞突起として認識してしまうためと考えられた。いっぽうで、終末点の直径のサイズを0.4-0.5 micro-mに設定した場合の樹状モデルは、実際の蛍光3次元画像と良く一致し、計測値にも矛盾点が少ないように思われた。
 今回用いたレンズでの理論的なresolutionは、xy方向、z方向で0.178 および 0.700 micro-mである。また、撮像の際のピクセル(ボクセル)サイズは、0.29 micro-mであるので、深追い(微細過ぎる構造の計測の追及)は禁物だと思われた。
 計測結果の、生物医学的な解釈については論文(Biochem Biophys Res Commun. 2012 Jan 13;417(2):765-70.)を参照頂ければ、と思います。

   
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