Virtual Imaging Center
トップ検索ご質問
modified   2013-06-11


----  ----    松田道行     2012/05/31

二光子顕微鏡の仕様
 京都大学では、昨年度末に蛍光生体イメージング室を開設し、これから徐々に顕微鏡をそろえて行く予定です。学外の皆様も利用できる施設を目指しています(予算がつけばの話ですが)。
 まずは二光子顕微鏡を導入しようとしていますが、共用の顕微鏡に求められる仕様につき、皆様のご意見をいただければ幸いです。
 当研究室の経験から言えば、正立型と倒立型の二台は必要。毎年購入するほどの予算はは取れないから、両方いれてしまいたい。OPOはぜひ欲しい。GaAsPの検出器も、などと言っているととんでもない値段になる。このあたりの優先順位の意見をお聞かせください。
 次に、共用機器として入れるとなると、幅広いユーザの意見を可能な限り取り入れたものにする必要があります。うちはマウスしかやっていないけれど、それ以外では、どのあたりの(潜在的なものも含めて)ユーザが多いのでしょう。
 あと、忘れそうな必須アイテムなどもよろしくご教示ください。共用機器を関している方のアドバイスを特に希望しています。
   
   本文引用

1 ----  ----  石井 優 共用の二光子顕微鏡 2012/06/01
 私は普段からこういった質問をよく受けています。
1.1台しか購入する予算がない場合は、倒立か正立かで悩んでいるところが非常に多いです。見たい臓器・組織によって、どちらが適しているか違ってくるので、「共用」ということであれば2台あるのがやはりベストです。仕様を下げても2台購入(MPレーザー1台で光路を2台に分けることも可)を優先された方がよいと思います。
2.OPOは確かによいのですが、mCherryなどの余程の長波長赤色でなければ、現存する蛍光タンパク・色素の多くは、OPOがなくてもChameleon Vision IIで励起できています。将来的により深部を観察したいということであればOPOは有用かもしれませんが、近赤外の蛍光プローブがまだあまり存在しない現状では、なかなか評価しづらいです。装置も高価ですし、共用機器として設置が必要かというと、優先順位は高くないと思います。
3.GaAsPの魅力は大きいと思います。より見えることで、これまで見えなかった暗いもの・深いものが見えますし、これまで見えていたものも、励起レーザーのパワーを落とすことができるのでより低侵襲にできます。使い方も簡便ですし、予算に余裕があればぜひ導入したいところです。ただ、例えばL社のHyDはNDDとしては2チャンネルまでしか搭載できないなど、いろいろと限界もあります(やはりdetectorは4チャンネル必要です)。
4.免疫系などの細胞の速い動きを追う場合は、レゾナンススキャナーの搭載が必須です(こうなると現在のところ2社に絞られますが)。
5.その他、導入の際には、ガス麻酔器(50万円くらいします)や加温チェンバー・暗箱などの周辺機器、イマリスなどの基本的な解析ソフト(トラッキング機能付きで300万円くらい)も合わせて導入しておいた方がよいと思います。本体が1億円くらいの買い物ですので、仲介業者も値引きしてくれます。

 あと、水を差すようなのですが、一般に「共用」の2光子顕微鏡の設置はなかなか難しいと思います。コンフォーカルとは異なり、まだまだ使いこなすには技術が必要です。新しい2光子を設置する場合は、少なくとも1人が愛情を持って立ち上げることが必要で、まずはこの人がやりたい実験に従って仕様を組むことが肝要と考えます。2光子と言いましても、神経系と免疫系では使い方にはかなり違いがあり、必要な仕様も異なります。誰にでも使える仕様にしても、誰も立ち上げないと、誰にも使えない機械になってしまいます。
      
   本文引用
2 ----  ----  岡田 峰陽 共用の二光子顕微鏡 2012/06/01
共通機器としての優先順位は、私も石井先生のご意見とほとんど同じです。
NDDチャンネル数、倒立と正立、高速スキャナ、GaAsP(可能な仕様が改善すればHyD)、OPOの順番かと思います。

倒立・正立は1台のレーザーを分けて(もしくは光路を切り替えて)使うのが経済的ですが、この場合、どうしても防振台は大きくなってしまうのですよね(自分でやったことはないので知らないのですが)。防振台は大きくなると建物によっては、床の限界荷重の心配が出てくることがあります。あと搬入経路もですね。

周辺機器として、石井先生が書かれたものの他には、Vibratomeや実体顕微鏡でしょうか。ガス麻酔機は酸素と混合できるタイプのほうが良いと思いますので、酸素ボンベの設置も重要かと思います。
      
   本文引用
3 ----  ----  根本知己 2012/06/01
石井先生、岡田先生のコメントにはほとんど付け加えることがないのですが、少しだけ書かせていただきます。
以前、生理研在職時は、1台のレーザー(10W励起のTsumami)を分岐させて最大3台(倒立2、正立1)まで入れていました。脳スライスや急性標本では十分でした。当然3台とも全て同じ波長ですから、実験の自由度は減ってイマした。しかし、最近のin vivoイメージングで最深部を狙う場合などは、NDでパワーを減弱しないことの方が多いですので、分岐式と100%導入とを選べるような光学系に設計しておく方が無難であろうと思います。

またOPOなどの長波長レーザーの導入が予め決まっているような場合には、予めスキャナーの中の透過特性を担保しておくことが重要になると思います。改めて交換と言うことになると数千万円かかります。
      
   本文引用
4 ----  ----  松田道行 ご意見ありがとうございました。 2012/06/03
 OPD: OPOは以前、岡田先生がかなり使えるとのレポートをされたので、入れる必要があると感じておりますが、確かに近赤外の蛍光タンパク質の優位性はまだ確立されていないように思います。予算をみながら再考します。
 高速スキャン: うちはFRETばかりなので、ほとんど不要だと思ってましたが、確かに免疫をやるには必要ですね。
 共通設備: 二光子顕微鏡が共用機器には向かないのではないかという石井先生の意見は確かに思い当たる節があります。intravital imaging自体がかなりの試行錯誤を有するものですから、ちょっと機械を借りてやるというものではないのかもしれません。技術支援職員を確保して、最初はかなり一緒にやってあげる、あるいは、1週間くらいの長い時間をかけた講習会を行う必要をやるといった対応が必要かもしれません。二光子顕微鏡技術が広がるかどうかは、「蛍光生体イメージ」領域の存在意義にかかわる問題ですので、いい知恵があるかたは、ぜひ投稿してください。
      
   本文引用
5 ----  ----  今村健志 2012/06/04
  雑用で忙しくてコメントするのが遅れていましたら、石井先生、岡田先生と根本先生からほとんどのお答えが出てしまいました。追加するとしたら、チタンサファイアレーザーやOPOについては、部屋の湿度、温度、クリーン度も重要かと思いますが、皆さんのところでは如何でしょうか?
  OPOについては、我々も生体深部観察では有用だというデータは持っておりますが、なかなか扱いが難しいです。
  石井先生がおっしゃるように、2光子励起顕微鏡は共通機器に不向きかもしれませんが、松田先生のおっしゃるように、「蛍光生体イメージ」領域の存在意義にかかわる問題ですので、今回のイメージング講習会@愛媛では、2光子励起顕微鏡に焦点を絞った実習を行います。現在、参加者を募っておりますので、希望者は是非ご応募ください。但し、この調子では、大幅にオーバーしそうですので、選考することになりそうです。

      
   本文引用
6 ----  ----  清川悦子 デモ 2012/06/04
 来年度購入できそうなので、先の細胞生物学会でL社、Z社、O社のブースを回ってみました。デモが可能かどうかについては、動物イメージングの場合は許可の問題があるので、2光子を持っている知り合いの先生のところに個別に連絡を取り、機械を見せてもらい使わせてもらうのが一番現実的であるとのことでした。その際に会社側はレンズなどの装備を持ってくることなどにより協力できるとのことでした。
 班員の皆さんの装備や特異な臓器一覧表などあって、このようなデモを受け入れ可能かどうかを表示するコーナーがあると、取っ付き難さがグッと減り、ユーザーも増えるのではないかと思いました。
      
   本文引用
7 ----  ----  岡田峰陽 OPOについて 2012/06/06
OPOに関して補足させて頂きます。

tdTomatoのようなRFPは、確かにOPOなしでも励起可能ですが、OPOを用いたほうがベストに近いところで叩けるので、明るくなるのは 間違いないと思います。実際、tdimer2 RFPでは圧倒的にOPOを使ったほうが明るかったです。なので近赤外プローブだけでなく、RFP全般についても、発現量によってはOPOの有用性は高いです。

ただし、現在私たちが用いている顕微鏡では、以下の問題があります。OPOへ入射できるレーザーの波長は、今のところ最長で850nmまでです。うちで使っているのは、80%をOPOに入れて、20%をOPOをバイパスして使う仕様です。20%の850nmのほうで、GFPやCFPを励起できるわけですが、850nmではYFPを励起するのがつらいです。かといってOPOから出てくる1100nmではYFPには長過ぎるので、YFPだけが現在のOPOシステムの苦手な帯域に入り込んでいる感じです。それでYFPとRFPを一緒にみるときには、以前別のスレッドに書いたように、OPOを使わずに980nmで叩いているのが現状です。
結局、ツインレーザーで、そのうち一台を100%でOPOに接続、もう一台を100%そのままつかう、というとてつもなく高額なものが、最強の仕様だと思います。そのうち900nmで入射できるOPOシステムが出てくるのかもしれませんが。



>  OPD: OPOは以前、岡田先生がかなり使えるとのレポートをされたので、入れる必要があると感じておりますが、確かに近赤外の蛍光タンパク質の優位性はまだ確立されていないように思います。予算をみながら再考します。
>  高速スキャン: うちはFRETばかりなので、ほとんど不要だと思ってましたが、確かに免疫をやるには必要ですね。
>  共通設備: 二光子顕微鏡が共用機器には向かないのではないかという石井先生の意見は確かに思い当たる節があります。intravital imaging自体がかなりの試行錯誤を有するものですから、ちょっと機械を借りてやるというものではないのかもしれません。技術支援職員を確保して、最初はかなり一緒にやってあげる、あるいは、1週間くらいの長い時間をかけた講習会を行う必要をやるといった対応が必要かもしれません。二光子顕微鏡技術が広がるかどうかは、「蛍光生体イメージ」領域の存在意義にかかわる問題ですので、いい知恵があるかたは、ぜひ投稿してください。
      
   本文引用


Copyright 「細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング」事務局