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研究課題

ランダムスキャン2光子励起顕微鏡による神経細胞機能の可視化

研究代表者(所属):井上貴文(早稲田大学 理工学術院・教授)

研究内容

 井上貴文
 細胞膜中を拡散により移動する膜タンパク質の動態の研究は盛んに行われており、伝達物質受容体がシナプスに集積するメカニズムが詳細にわかってきた。しかしながら遊離タンパク質の細胞内での動態を観察することは未解明の領域として残されている。遊離タンパク質の細胞質中での拡散は膜タンパク質と比べて桁違いに速く、従来のCCDカメラや2光子励起顕微鏡では捉えられなかったためである。我々はミラーの代わりに音響光学偏向素子(AOD)を採用し超高速にスキャンできる2光子励起顕微鏡を開発した。この顕微鏡は画素数を絞り込めば最大100 kHzで走査することができる。我々はこの走査速度を用いて、遊離タンパク質群がシナプス入力依存的にシナプスの微小領域に動員されて機能を発現する様を脳組織中の神経細胞で実際に観測することを試みる。分子の動態測定法のひとつに「蛍光相関分光法(FCS)」がある。この方法の原理はシンプルだが、タンパク質分子の濃度と拡散速度が求まり、さらに異なる波長の蛍光標識をした2種のタンパク質分子を用いて相互作用の解析を行うことができる(蛍光相互相関分光法; FCCS)。今回開発した2光子励起顕微鏡の高速性を生かして、神経細胞内の様々な部位(シナプス、シナプスの基部、細胞体、核など)から同時にFCS記録を行うことにより、細胞内部でそれぞれ異なるタンパク質分子の挙動を一網打尽に捉えることをめざしている。

代表的論文3編

Lateral diffusion of inositol 1,4,5-trisphosphate receptor type 1 in Purkinje cells is regulated by calcium and actin filaments.
Fukatsu, K., Bannai, H., Inoue, T., Mikoshiba, K.
J. Neurosci., 114, 1720-1733, (2010)

Activity-dependent tuning of inhibitory neurotransmission based on GABAAR diffusion dynamics.
Bannai, H., Lévi, S., Schweizer, C., Inoue, T., Launey, T., Racine, V., Sibarita, J.B., Mikoshiba, K., Triller, A.
Neuron, 62, 670-682, (2009)

Lateral diffusion of inositol 1,4,5-trisphosphate receptor type 1 is regulated by actin filaments and 4.1N in neuronal dendrites.
Fukatsu, F., Bannai, H., Zhang, S., Nakamura, H., Inoue, T.(Corresponding Author), Mikoshiba, K.
J. Biol. Chem., 279, 48976-48982, (2004)


関連HP  早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 生命医科学専攻 井上研究室
(http://inouelab.biomed.sci.waseda.ac.jp/inouelab-web)

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