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modified   2013-06-11


----  ----    松田 道行     2012/03/23

MetaMorph NX 使用レポート
もっともよく使われいてる市販の画像解析ソフトMetaMorphの後継ソフトMetaMorph NXの使用感をレポートします。

NX開発の背景: MetaMorph version 7は、マルチコアプロセッサーに対応しておらず、画像処理速度に難がある(実際、画面の前で暇を持て余すことも多い)。そこでMolecular Device(MD)社では、マルチコアプロセッサー対応で、多くの画面を同時に表示できる新しいMetaMorphNXを開発した。一見、version 7と似ているが実体としてはかなり異なる。XPからwindows 7への流れと軌を一にするといえばわかりやすいか。

以下は、MetaMorphNXのあくまでも個人的な使用後の感想である。

まとめ?: これまで、MMを使いこなすのは初心者には難しいとされてきた。そこで、MD社がとった戦略は、視覚的なインターフェースで直感的に操作できるソフトを作り、これでは飽き足らない場合は、プロフェッショナルなバイオインフォマティシャンにPythonでプログラムを書いてもらう、という二極化戦略であるようだ。松田研究室の学生・研究者はこの中間層(Basic程度のプログラム能力。Journalではコマンドを作れるがそれ以上はしんどい)に入るので、当面はNXには移行できないが、これから画像解析を始める研究者にはわかりやすいだろう。
まとめ?: オブジェクト指向の定量的解析を進めるにはメリットがある。たとえば、小胞の数を数えたり、細胞の大きさや形を比較したりするのは、MMよりは各段に容易である。一方、多数のスタックファイル(タイムラプスなど)を処理したり、Ratio画像を作ったりする操作は現時点ではあまりできない。現MMユーザは、NXはMMとはまったく別もののオブジェクト指向性の画像解析ソフトとして認識するのがいいようである。まだ発展途上のソフトであるので今後に期待したい。

以下、詳細な感想:
1. 旧MetaMorph(以下MM)と比較して、視覚的なインターフェースとなっている。つまり、文字で書いてあったところがほとんどシンボルになっている。
2. モジュールが充実している。核、神経突起、細胞膜などを蛍光画像から容易に抽出できる。こういうことがやりたい、というのを出来合いで提供しますという姿勢である。
3. 解析がオブジェクト指向性である。オブジェクトとは、核、小胞、突起など特徴的な形を有する構造のことである。画像を定量することに重点が大きく移っていることを感じさせる。
4. 大まかな画像解析の流れは次のようになる。
(ア) ノイズを消す: さまざまなフィルターが用意されている。Open(輝度の高いノイズを消す)、Close(暗いノイズを消す)など。ただし、これらはMMにもあったので新規のものではない。
(イ) オブジェクトを選ぶ。単なる蛍光閾値だけではなく、形や、となりのオブジェクトとの距離等を使って、自分の狙ったオブジェクトが選べるようになっている。
? このツールが充実しているのが特徴。特にワンクリックでオブジェクトが選べるのが売りの一つ。
? いろいろなマスクを重ねていくことで、自分の欲しいオブジェクトを指定する機能はかなり優れている。その効果がマルチ画面でみていけるのは便利である。
? たとえば小胞をカウントしたり、核小体の輝度を図ったりといったことには強い。
(ウ) オブジェクトを領域(Region)として指定し、領域の計測値(蛍光値、面積など)をExcelフォーマットで出力する。
(エ) 上記計測値をそのままグラフにする機能がMMより充実している。
5. 自動化: 一連の操作を自動化するのはCustom Moduleという機能で行う。これはMMではJournalと言われていてBasic様のコマンド形式であったが、これが簡便になったものである。
(ア) Custom Moduleでは、MMにあったArithmeticなどの機能が使える。ただし、数はかなり減っているし、スタックファイルに対し自動で行えるわけではない。
(イ) Custom Moduleには、出来合いのものが多数あり、膜移行や、神経突起伸展などを自動で検出できるものが“別売り”で手に入る。これがNXの売りの一つ。
6. MMのJournal機能で行っていた自動画像化処理を組みたい場合は、Pythonで記載するようになった。米国では研究室にBioinformaticsのテクニシャンがいることが多いので、彼・彼女らがそのような画像処理を引き受けるという前提の様である。
   
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