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PubMedID 23995068 Journal Nat Neurosci, 2013 Oct;16(10);1499-508,
Title ReaChR: a red-shifted variant of channelrhodopsin enables deep transcranial optogenetic excitation.
Author Lin JY, Knutsen PM, ..., Kleinfeld D, Tsien RY
理研・脳センター・シナプス分子機構研究チーム      宮坂 信彦     2014/02/10

a red-shifted ChR
神経科学の分野では、光活性化イオンチャネルであるチャネルロドプシン(ChR)を用いたoptogeneticsが、神経回路の機能を解析する上で欠かせない実験手法となってきています。これまでに開発されたChRsは、主に青色光によりチャネルが開口し、標的ニューロンを脱分極させることで、そのニューロンとのシナプス結合や結果として表出する動物行動の解析に利用されてきました。特にマウスでは、光ファイバーを脳の特定の部位に挿入することで、自由行動下に特定の神経回路素子の機能を解析することが可能です。しかしながら、光ファイバーを挿入するため、脳にダメージを与えること、また、マウスよりも小さなモデル生物(ショウジョウバエやゼブラフィッシュ)では、脳に光ファイバーを挿入した状態での行動解析が困難であるという問題がありました。このような問題点を解決する手段として、組織透過性が高く、動物の視覚刺激になりにくい赤色光(600 nm以上)によって活性化するChRの開発が進められてきました。

この論文では、すでに報告されていた赤色光活性化型 ChRs(VChR1, C1V1)を改良し、細胞での発現量、膜への移行、チャネル開口の速度などの点で従来のものより優れたReaChRを開発しています。さらに、ReaChRを大脳皮質運動野や、脳のより奥深くに存在する顔面運動神経核のニューロンに発現させ、非侵襲性に赤色光(617/627 nm)を照射することで、ヒゲの運動を誘起することに成功しています。また、この論文とは別に、D.J. Andersonのグループが、ショウジョウバエの様々なCNSニューロンにReaChRを発現させ、非侵襲性に赤色光を照射することで、様々な行動の誘起に成功しています(Inagaki et al., Nat. Methods, 2013)。

ReaChRはチャネル閉口の速度や、活性化光の波長特異性の点で未だ問題が残るようですが(青色光でも活性化される)、さらに開発が進むことで、異なるニューロン集団を異なる波長の光で活性化(または抑制)するなど、in vivoでの応用がさらに広がると期待されます。
   
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