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PubMedID 22422267 Journal Nature, 2012 Mar 15;483(7389);345-9,
Title Goblet cells deliver luminal antigen to CD103+ dendritic cells in the small intestine.
Author McDole JR, Wheeler LW, ..., Newberry RD, Miller MJ
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座  免疫機能制御学分野    由井克之     2012/06/25

腸管の生体イメージング
粘膜免疫の蛍光イメージング論文です。本研究は、定常状態において腸管腔内分子の取り込みと免疫系へのアクセスを生体イメージングにより解明しようとした研究です。正立二光子顕微鏡に設置した特製チャンバーを用い、マウスの腸管を漿膜側と管腔側双方から観察することができる生体イメージング実験システムをセットアップし、4時間程度の継続観察が可能だとのことです。

ローダミン化分子を指標に、小腸の管腔サイドから粘膜固有層サイドへゴブレット細胞内を分子が輸送され、樹状細胞へ受け渡されることを明らかにしました。過去のex vivo研究では、粘膜固有層の樹状細胞が突起を管腔側まで伸ばしてサンプリングすることが示唆されていましたが、今回ゴブレット細胞による輸送が主であることが示されました。腸管という扱いにくい組織の生体イメージングを行い、新規知見を明らかにした点は高く評価できる研究です。

樹状細胞サブセットのイメージングには、YFP(CD11c+)とGFP(CX3CR1+)を用い、ダブルポジティブとシングルポジティブで識別しました。二光子顕微鏡イメージングのデータ(図3c)を載せていますが、図ではYFP+GFP+とYFP+GFP-の区別が今ひとつはっきりしないように見えます。二光子顕微鏡でどの程度蛍光色素の重ね合わせが識別可能なのか、詳しい先生がおられたらアドバイスいただければありがたいです。
   
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1 京都大学生命科学研究科 生体制御学分野  松田研  櫻井敦朗 邪推ですが 2012/06/26
紹介ありがとうございます。
これほどきれいな腸管イメージングができるのはすごいなと思いました。また、ゴブレット細胞が分子の輸送に関わっているという点も驚きです。

ゴブレット細胞が分子の輸送を行っているという内容でしたが、輸送のメカニズムについてもう少し言及してほしいと思いました。ゴブレット細胞の分泌を促進させるとGAPが増えるとのことでしたが、分泌したときに分子が流れ込んでしまうのか、それともゴブレット細胞が進んで分子を取り込んでいるのかが気になりました。

>図ではYFP+GFP+とYFP+GFP-の区別が今ひとつはっきりしないように見えます。
ラムダスキャンでスペクトルをとれば識別可能だと思いますが、2光子でどれだけはっきりと分けることができるのかはわかりません。撮ってみたもののはっきりと分けることができなかったから、あえて緑と水色という見分けづらい2色で表示しているのではと邪推してしまいました。
      
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2 金沢医大 病理I   清川  清川悦子 倒立 2012/06/26
 ちょっと脇道に逸れてしまいますが…観察方法が面白いですね。
 蠕動の減弱ははアトロピンで、観察は倒立顕微鏡で、Vetbondなるものでチャンバーに付けているのですね。この方法は、松田研究室で初期の頃行っていた方法に似ていると思うのですが、呼吸によるブレが大きかったように記憶していますが、この点をどうクリアしたのか興味があります。
 それからヒト材料でも、取ってきた後にデキストランを加えることで血管を観察可能である(図2hi)のを初めて知りました。今後の参考になる論文をご紹介いただきありがとうございました。
      
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3 理研・RCAI  免疫細胞動態  岡田峰陽 ちょっと遅いですが・・ 2012/07/07
私も参加しなければ、と思いながらなかなか出来ずに、ちょっと遅くなってしまいました。
ゴブレット細胞のイメージング、ほんとにきれいですよね。でもみなさんが挙げられているメカニズムの疑問も当然ありますね。

このラストオーサーのひとは、彼も私もポスドク(別の研究室で)だったときに、私にイメージングを教えてくれた友人です。もし行って方法習いたい方がおられたら、メールをするぐらいの援護は出来るかとおもいます。彼は昔からO(オー)リングとVetbondと、樹脂材を自前で加工したもので何でもやってしまうかんじでした。

YFP+GFP+とYFP+GFP-の区別は、Figや動画でみえているよりも本人たちはかなりの確度で出来ているとおもいます。CX3CR1のGFPは明るいので、フィルタを選べばYFP+のなかのGFP+,-の区別は容易と思います。ただ阪大の竹田潔先生のラボの論文にもあるように、CX3CR1+のMyeloid系細胞にも発現の高いのと中くらいのとあるようなので、実際にはもう少し複雑なのだろうと思いました。
      
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