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PubMedID 21527931 Journal Nat Methods, 2011 May;8(5);393-9,
Title Two-photon absorption properties of fluorescent proteins.
Author Drobizhev M, Makarov NS, ..., Hughes TE, Rebane A
京都大学 生命科学研究科  生体制御学    松田 道行     2011/07/29

根元研の方、教えてください
先週、技術講習会@愛媛大学で、根本教授の講義を聞いて、この論文をまだ読んでないことを思い出しました(受講者の中には難しいと感じた方もいたようですが、二光子顕微鏡に少し馴染みがある方なら理解が深まる素晴らしい講義だったと思います)。

論文の要約: 単光子吸収と二光子吸収では、その光子吸収の波長特性が違う。特に、後者では短波長側に大きな吸収ピークが現れる。これを利用すれば、二光子顕微鏡法においては短い波長で二つの蛍光タンパク質(緑と赤)を可視化できる。しかし、短波長側は褪色しやすいので注意が必要。

先のシンポジウムで、岡田峰陽先生がOPOを使うとRFPも二光子でよく励起できるという話をしておられましたが、普通のTiSレーザーで赤い蛍光タンパク質が使えればそれに越したことはありません。この論文(Table 1)によれば、TagRFPは、本来、1050 nmで励起される蛍光タンパク質ですが、759 nmでも励起できて、こちらのほうが3倍明るい。うちの研究室でやったときははかばかしくなかったように記憶していますが、二光子顕微鏡に詳しい研究室でのこの論文の評価、あるいは、赤色蛍光タンパク質を短波長側で励起するというアイデアはどう評価されているのでしょうか。
   
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1 理研  免疫細胞動態研究ユニット(岡田峰陽研)  北野正寛 根元研ではないですが。。。 2011/07/29
目から鱗的なレビューですね。こういうの探してました。
この短波長側が褪色しやすいというのは、たしかに経験的に同意します。かつて Kikume Green & Red の細胞を 900 nm で観察しましたが、そのときは 30 sec おきの取得で、赤にした細胞だけあっさり褪色して見えなくなってしまいました。残念ながら 750 nm はまだ試してませんが、やはり褪色との戦いになりそうな予感がしますがどうでしょうか。

というか、そもそも750 nm なんかでタイムラプスすると、褪色もさることながら、細胞が完全に止まりそうな気がします。また自家蛍光も出まくりでめちゃんこ汚そう。

ちなみに OPO ですが、やはり 1100 nm の透過性ゆえでしょうか、通常の二光子観察で起こる組織の奥の方におけるぼやけが劇的に改善されてて驚きました。OPO の回し者ではないですが、今後はこれですね。さっきの Kikume も、いつかレポートします。
      
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2 理研  免疫細胞動態研究ユニット(岡田峰陽研)  北野正寛 根元研ではないですが。。。 2011/07/29
目から鱗的なレビューですね。こういうの探してました。
この短波長側が褪色しやすいというのは、たしかに経験的に同意します。かつて Kikume Green & Red の細胞を 900 nm で観察しましたが、そのときは 30 sec おきの取得で、赤にした細胞だけあっさり褪色して見えなくなってしまいました。残念ながら 750 nm はまだ試してませんが、やはり褪色との戦いになりそうな予感がしますがどうでしょうか。

というか、そもそも750 nm なんかでタイムラプスすると、褪色もさることながら、細胞が完全に止まりそうな気がします。また自家蛍光も出まくりでめちゃんこ汚そう。

ちなみに OPO ですが、やはり 1100 nm の透過性ゆえでしょうか、通常の二光子観察で起こる組織の奥の方におけるぼやけが劇的に改善されてて驚きました。OPO の回し者ではないですが、今後はこれですね。さっきの Kikume も、いつかレポートします。
      
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3 北大・電子研・生体物理  根本研  日比 輝正 コメントです 2011/08/01
根本研の日比です。「研究室での」というわけではなく、私の個人的な意見になってしまいますが、コメントさせて頂きます。
まずこの論文自体は、特に資料性という意味で非常に有用ですし、2光子顕微鏡で蛍光蛋白質を使う上での色々な事が書いてあり、勉強になります。(私を含めて)生物の人間には、数式の所など100%理解するには難しく感じるところもありますが、関連の実験をする上では、目を通しておくべきレビューだと思います。
このレビューに書いてあるように、2光子励起では、1光子励起のスペクトルを単純に波長を2倍にしたものと異なる場合があるのは時々経験する事です。実験に用いる励起波長については、波長によってレーザーパワー、パルス幅、深部到達性などが変わるため、結局、励起波長を広めに振ってみて、他の同時に使用する蛍光色素や蛍光蛋白との輝度バランスも考慮しつつ、用いるフィルター等と共にその実験の最適条件を決める様にしています。正直、2光子吸収断面積の事は深く考えずに、短波長側での励起も含めて「やってみて判断」という感じでしょうか。ただ、ダメージや深部到達性等の点から、短波長側は使いづらいので、やはり長波長のレーザーを使える様にしたいところです。
将来的に、固定波長の近赤外レーザーを2〜3本備えた2光子顕微鏡が開発されたら、その波長に最適な蛍光蛋白質が標準的に使われる様になっていくのではないでしょうか。
      
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4 京大 生命科学研究科  生体制御学  松田 道行 Feedbackを期待しています。 2011/08/02
北野さん、日比さん、ありがとうございました。
mCherryなどを短波長側で励起して使えるかに関しては、やってみないとわからないということですね。北野さんは、否定的でしたが、こういう経験的情報の蓄積は、「蛍光生体イメージ」領域として大事だと思います。みなさまの情報提供を期待しております。うちでも、近いうちにやってみます。
      
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5 北大電子研  生体物理  根本知己 分子関係に詳しい方に質問 2011/08/06
ブルーシフトやスペクトルの相対的な高さや幅の変化を一般的に理解出来るかという観点は、今後の蛍光、発光プローブの開発、選択の問題として重要であろうと思います。
そこで、700nm近傍での高い吸収スペクトルの山についてです。この中で、S0→S2の励起の起きる確率が2光子励起過程の場合、量子力学的な共鳴により増加するということが書いてあります。誠に不勉強で申し訳ありませんが、以下の点について詳しい方にご説明いただけると大変ありがたく存じます。

1.1光子励起では起きないが、2光子励起では起きやすいという実験結果ですが、単なる実験結果の解釈として「共鳴」と表現しているだけか、それとも一義的な量子力学的モデルや計算が存在しているのか?
2.蛍光タンパク質に固有の問題か、他の有機系小分子や固体でも見られることか?
3.S2→Tnへの遷移が小さくなることはありませんか?「1光子励起で暗いこと」「2光子励起では明るいがすぐに暗くなってしまう)」ことについて、消光か非発光過程の遷移かも含め、3重項状態への遷移確率の問題はどの程度関与しているのだろうかと考えております。

最後については特にパルスレーザーを用いて遷移を制御し明るい画像を取るという話がありますので、それと同じ理解が可能か知りたいと考えております。

以上よろしくお願い申し上げます。
      
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