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PubMedID 22683126 Journal Immunity, 2012 Aug 24;37(2);351-63,
Title Dynamic in situ cytometry uncovers T cell receptor signaling during immunological synapses and kinapses in vivo.
Author Moreau HD, Lemaitre F, ..., Lennon-Dumenil AM, Bousso P
大阪大学免疫学フロンティア研究センター  細胞動態学    石井 優     2012/11/07

細胞の「動き」に基づいた分類法に注目−免疫学の新たな解析法として
 リンパ節でのT−DC相互作用の2光子励起イメージング解析の(少し前の)論文。学術的にすごく新しい内容という訳ではないが、解析法が興味深いので紹介したい。最も重要な図はFigure 3であり、ここでは、T細胞の動きをIMARISでトラッキングした後に、速度などのparameterをFACSデータの形式(FCSファイル)に変換して、FlowJoなどのFACS用ソフトで解析している。これにより、T細胞の集団を速度の違いによって亜分類することができる(Dynamic In Situ Cytometry: DISCと名付けている)。著者らはこの解析により、T細胞の速度(=DCとの相互作用を反映)が、細胞表面上のCD62Lの発現と相関していることを証明している。
 免疫学の歴史とは、分類の歴史である。形態学的には「リンパ球」「単核球」としか区別できなかった細胞を、様々な表面抗原を元に亜分類し、それらの個別の機能を同定してきた。表面抗原を検出するモノクローナル抗体の作成やフローサイトメトリー、さらに特定の集団を分取するソーティングの技術が、近年の免疫学の爆発的な発展に大きく寄与してきたことは疑いの余地はない。300を超えるCD抗原の組み合わせだけでなく、イメージングによって捉える細胞の動きの速度や方向性、ランダムさ、形態変化などによって、免疫細胞をさらに亜分類していくことが、今後の免疫学研究を大きく革新させるかもしれない。
 なお、種々のパラメーターをFCSファイルに変換させるソフト(DISCitという)は、Philippe(コレスポ)に連絡すれば送ってもらえるとのこと。
   
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1 京都大学生命科学研究科  生体制御学  松田道行 FRETマウスに最適 2012/11/08
感想です: 私たちはFRETバイオセンサーを発現するTGマウスの二光子顕微鏡を使った解析を続けています。いま、癌研究が主ですが、免疫系での展開を目指すほうが有用性を示すには向いているなと今更ながら思いました。本論文ではT細胞の活性化はカルシウムセンサーで見ていますが、ERKとかRasとか、ほかの情報伝達系の活性化を観察できればもっと情報が増えると思われます(うちのマウスを使えばできます!)。二光子でトレーシングした細胞をFACSソフトで解析するというのを売りにして、DISCと名前を付けていますが、たしかに、細胞数を集めて解析するには便利かと思います(細胞を集めるのはたいへんでしょうけどね)。二光子顕微鏡はLeicaですが、レンズはOlympusのを使ってますね。このあたりを自由自在にやれる力があるところがすごいと思います(無限遠焦点だから理論上はいいのでしょうけど)。これからイメージングセンターが各大学にできてくるのでしょうが、それくらいの力のある人材を確保できるシステムが必要だと思いました。
      
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