PubMedID |
22968700 |
Journal |
Nat Commun, 2012;1054, |
Title |
Real-time in vivo imaging of the beating mouse heart at microscopic resolution. |
Author |
Lee S, Vinegoni C, ..., Nahrendorf M, Weissleder R |
大阪大学・免疫学フロンティア研究センター・感染動物実験施設 伊川研 佐藤 裕公 2013/01/15
高解像度で生きたままの心臓を見る試み
いつも勉強させていただいております。
今回ご紹介するのは、共焦点&2光子顕微鏡を使って拍動する心臓の表面を高解像度観察した、という論文です。
新しい工夫は大きく分けて2つあります。
<工夫1:motion compensation stabilizer>
麻酔下でマウスを人工呼吸器をつなぎ、開胸して
“心臓表面--接着剤--金属リング--水--対物レンズ”
という風にセットアップします。(リングとレンズは独立しています)
この金属リングはTEMのセクションを拾うリングに似ていますが、逆端がマニュピレーターのように棒で固定されていて、弾性を使って軽く押さえつけているようです。
対物レンズは共焦点にはスティック型レンズのIV-OB13F20W20、2光子にはx20 XLUMPLANFLを使っています。
<工夫2:cardiorespiratory-gated acquisition>
心拍(心電図)と呼吸(気管支の圧力)をはかって、最も振動が少なくなったときにだけacquireするようにPCで制御系を組んでいます。
彼らの解析によると、心電図のP波とQ波の間がもっとも振動がない時間が続くそうで、ここをacquisition windowと設定しています。
呼吸も見てやらないと最大の結果は出ないそうです。
その成果ですが、秒、分、時間のそれぞれの単位で、最近使われている吸引式固定器を用いた方法並みの解像度が得られています。
さらにこの方法だと侵襲性が低く臓器の損傷が少ない、というのが彼らの主張です。
吸引器の方法だと撮影したい周りを広く露出させる必要があるのに対して、これはアクセスしやすさもいいように感じます。
確かにリングを外したあとも生存できるようですし、長期の観察に向いていますね。
自分が使うにはPCで制御系を組むところが少し敷居が高いですが、アイディアが新しい撮影を可能にするいい例だと思って紹介させていただきました。
こういうのを読むと、”機械を作りたい”と思います。
現在、我々は子宮や卵管のなかの卵/精子を見ています。
卵管の中を見る時は、卵管を背中から引っ張り出して観察するんですが、1匹の精子を追うときは2枚のカバーグラスではさんだチャンバーを作って軽くはさんでいます。
このチャンバーを体から離してやれば心拍や呼吸の影響はほぼキャンセルできますが、子宮も卵管も実はかなり大きなぜん動運動をするので、「ごわっ」と持って行かれず、かつ侵襲しすぎないように卵管を挟むところが難しいことがあります。
今回の方法を自分たちの実験に使うにはPCで制御系を組むところがネックですが、アイディアが新しい撮影を可能にするいい例だと思って紹介させていただきました。
こういうのを読むと、”機械を作りたい”と思います。