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PubMedID 23352234 Journal Immunity, 2013 Jan 24; [Epub ahead of print]
Title Peripheral Prepositioning and Local CXCL9 Chemokine-Mediated Guidance Orchestrate Rapid Memory CD8(+) T Cell Responses in the Lymph Node.
Author
長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科・感染免疫学講座  免疫機能制御学分野    由井克之     2013/02/08

感染免疫のイメージング
免疫記憶と感染免疫に関するRon Germainグループの論文を取り上げてみました。

免疫記憶は、二回目の感染に迅速に応答して病原体を排除する高度な免疫系の仕組みであり免疫学の謎のひとつとされています。一度目の抗原刺激で活性化された特異的リンパ球が長期間生存し(記憶T細胞、記憶B細胞)、二回目の同じ刺激に対して迅速かつ強力な応答を行うことが知られています。本研究は、中枢性記憶T細胞がナイーブT細胞と異なりリンパ節内で病原体の入り口近傍部位に分布し、さらに感染時には迅速に感染部位に集積する仕組みがあることを蛍光イメージングにより明らかにしたものです。

T細胞受容体トランスジェニックマウス OT-Iを用い、ナイーブ細胞と記憶細胞を異なる蛍光蛋白でラベルすることにより、両者の組織分布と動態の違いを明らかにしています。リンパ節全体を俯瞰するため、被膜下200μm程度までは2光子レーザー顕微鏡による生体イメージングを行い、より深部は固定切片にして共焦点レーザー顕微鏡で観察しました。抗原はgfp発現ウイルス、CD169陽性細胞は蛍光ラベル抗体、樹状細胞はCD11c-YFPマウスを用いて各々可視化し、生体イメージングを行っています。技術的に興味深かったのは、蛍光ラベル抗CD169抗体0.5μgを皮下注することによりCD169陽性細胞のイメージングを行っている点でした。食細胞系だからできるのかも知れませんが、試してみる価値はありそうだと思いました。

免疫系にとって細胞の位置情報は極めて重要ですが、従来の組織学的手法での解析には様々な困難がありました。生体イメージング技術の発達により、適切な蛍光を付加すれば個々の細胞の位置や動態を比較的容易に解析することが可能になりました。実際に2光子レーザー顕微鏡を使ってみるとラベルした細胞しか見えないので、適切な実験デザインを行えば個々の細胞の位置や動態の違いは容易に解析できることがわかります。免疫学や感染症学において、この技術は今後ますます威力を発揮するものと思われます。
   
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