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PubMedID 23349314 Journal Clin Cancer Res, 2013 Mar 15;19(6);1494-502,
Title Molecular photoacoustic imaging of follicular thyroid carcinoma.
Author Levi J, Kothapalli SR, ..., Starcevic D, Gambhir SS
京都大学大学院薬学研究科  病態機能分析学分野    天満 敬     2013/03/19

アクチベータブル光音響プローブを用いた甲状腺がん移植マウスのインビボイメージング
この数年新しい光による生体イメージング技術として光音響イメージングが注目されてきています。

光音響イメージングでは、体外より照射した近赤外パルスレーザー光を吸収した分子プローブ(あるいは血中に存在するヘモグロビン)が放出する超音波を体外から計測することで、分子プローブの存在(あるいはヘモグロビンを対象とした場合は血流・酸素飽和度など)を三次元的に測定することができます。

通常の蛍光・発光イメージングよりも生体深部(〜数cm)を高解像度で画像化することが出来るため、今後の応用が期待される生体イメージング技術です。


表題の論文は著者らが2010年に開発したアクチベータブル光音響ペプチドプローブを担がんマウスに静脈内あるいは腫瘍局所に投与し、移植甲状腺がんに存在するMMP活性を光音響イメージングすることに成功した報告です。

光音響信号は一般的にそれほど強くないので光音響プローブとしてはナノキャリアが用いられる(金ナノロッドや色素内包リポソームなど)ことが多いですが、この報告は数残基のMMP基質ペプチドを母体として、Alexa750、BHQ3を両端に結合させた低分子のプローブを用いているところが特徴です。

このプローブは、MMP活性により切断されるとBHQ側は近傍のがん細胞内に蓄積する一方で、Alexa側はwashoutされるように設計されているため、光音響信号をAlexaとBHQの吸収波長のレーザーを用いてそれぞれ測定すると、その光音響信号の比がMMP活性を表すことになります。


感度的にどの程度実際使えるプローブであるのかは疑問が残りますが、蛍光のアクチベータブルプローブと類似の薬剤設計が光音響プローブとしても有効で、それがインビボでも機能し得ることを示した点は重要な報告だと思いました。
   
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