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PubMedID 23868258 Journal Nature, 2013 Jul 18;499(7458);295-300,
Title Ultrasensitive fluorescent proteins for imaging neuronal activity.
Author Chen TW, Wardill TJ, ..., Svoboda K, Kim DS
東京大学医学系研究科  神経生理学    喜多村和郎     2013/09/10

高感度のカルシウムセンサータンパク質
皆様、はじめまして。7月より班員に加えていただきました、喜多村和郎と申します。専門は神経生理学で、in vivo 2光子イメージングを用いた、動物個体の神経活動イメージングの研究を行なっております。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

さて、今回ご紹介させていただく論文は、もう既に皆様もご覧になったかもしれませんが、新しい高感度のカルシウムセンサータンパク質(GECI)が開発されたというものです。 cpGFPとCaM, M13ペプチドからなるGCaMPをpoint mutationにて改変し、培養ニューロンにトランスフェクトして反応を測定することでスクリーニングを行いました。447の変異体をスクリーニングした結果、3つの高感度変異体を選定し、GCaMP6s, 6m, 6f(それぞれslow, medium, fast kineticsの略)と名付けられました。6sが最も感度が高く、1活動電位に対して旧バージョン5Gの7倍の蛍光変化を示し、chemical indicatorのOregon Green BAPTA-1と同程度の感度を有するとのことです。6fは蛍光変化は5Gに比べて4倍と若干感度は落ちるものの1活動電位を検出するには十分であり、特筆すべきはrise time, decay timeがともに5Gの約1/2で、現在最も速いGECIということです。これらの新しいGCaMP6を用いて、マウス視覚野において個々のニューロンの活動イメージングやスパイン活動イメージングが可能であり、非常に有用なツールであることが示されています。問題点としては、長期に発現することにより、ニューロンの反応が悪くなることですが、1〜2ヶ月であれば大きな問題ではなさそうです。これらのセンサーは、論文発表前からAddgeneやUPenn vector coreで配布されており、すでに多くの研究者が使っている模様です(我々も使用しています)。一点、非常に残念なのは、埼玉大の中居淳一先生のグループが昨年、同様の高感度GCaMPについて既に論文を発表されている(PLoS ONE 7, e51286 (2012))のですが、引用されておらず公平性に欠けているところでしょうか。

本領域での私の研究課題は、これらの神経活動イメージングを大規模に行うというものです。今後ともご指導のほど宜しくお願い申し上げます。
   
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