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PubMedID 24013820 Journal Nat Methods, 2013 Sep 8; [Epub ahead of print]
Title Brain-wide 3D imaging of neuronal activity in Caenorhabditis elegans with sculpted light.
Author Schrodel T, Prevedel R, ..., Zimmer M, Vaziri A
理研 QBiC      岡田康志     2013/09/18

ワイドフィールド2光子顕微鏡法による高速3次元計測
2光子顕微鏡法のメリットは繰り返すまでもないと思います。
最大の欠点は撮影速度です。点走査型なので、広い領域、深い範囲にわたっての
イメージングを行うと、そのボクセル数に比例して撮像時間が長くなります。

筆者らは、テンポラルフォーカシングと呼ばれる2光子励起を面で行う方法を
用いてワイドフィールドの2光子顕微鏡を作成しました。

通常の2光子顕微鏡では、励起光を1点にフォーカスすることで焦点でのみ
2光子励起が起こるようにします。これでは焦点面内の1点のみしか照らす
ことができず、面全体を同時に照射することは出来ません。

テンポラルフォーカシング法では、回折格子を用いてフェムト秒光パルスを
分散させ、これを試料に投影することで焦点面でのみ2光子励起が起こるように
します。焦点面外では光パルスが時間軸方向に分散してパルス幅が拡がりすぎる
ので2光子励起が起こらず、焦点面でのみパルス幅が元のフェムト秒レベルに
戻って2光子励起が起こるという原理です。

ただし、この方法では、面全体に励起光が拡がってしまうので、生物試料の
蛍光イメージングに用いることは困難でした。筆者らは、2つの力業でこれを
克服しています。まず、再生増幅器を用いて繰り返し周波数を下げてピークパワーを
上げることで、励起時の光子密度を稼いでいます。ダメージが心配になりますが、
試料面で平均パワーで15-20 mW ですから、ダメージが出ないギリギリといった
感じです。(筆者ら自身、40 mWあてると形態変化が起こると書いています)

検出側は、UPLAN-APO 40x/1.3 という明るいレンズを用い、蛍光像を浜ホトの
イメージインテンシファイアで増幅してsCMOSのORCA FLASH4.0 で受けています。

これらの工夫により、GCaMP5Kの信号の検出が出来るS/Nで1セクション 12.5 ms
(80 FPS)、線虫全体で5 Hz 程度のイメージングに成功しました。

高速3次元イメージングでは光シート照明が有力な方法ですが、この方法は
通常の正立あるいは倒立顕微鏡の落射蛍光の光路がそのまま使えて試料周りの制約が
少ないのがメリットでしょう。


   
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