PubMedID | 23884240 | Journal | Nat Commun, 2013;2207, |
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Title | High-speed panoramic light-sheet microscopy reveals global endodermal cell dynamics. | ||
Author | Schmid B, Shah G, ..., Aanstad P, Huisken J |
比較的大きなサンプルを生きたまま、弱い照射光で退色と光毒性少なく、長時間観察できることがselective plane illumination microscopy (SPIM)などの光シート顕微鏡の利点ですが、一方でそのデータ量の大きさがデータ解析を行う上でのボトルネックになっています。
この論文ではIlluminationとDetectionレンズがそれぞれ2つあるFour-lens SPIMにより高速に多点観察するとともに、リアルタイムでprojectionを行うことにより、データ量を1/240に圧縮しています。この際、観察対象の発生初期のゼブラフィッシュ胚が球形であること、初期内胚葉細胞が一層であることを利用して球面様にprojectionしており、観察対象の特性に適したprojectionを行うことにより、データの質を保ったままデータ量を圧縮できることを示しています。
以前私は初期内胚葉細胞の移動にはケモカインレセプターCxcr4aが重要であり、リガンドCxcl12のケモアトラクタントな作用が重要であると報告していました。この論文では野生型とCxcr4aモルファントのすべての初期内胚葉細胞の移動をFour-lens SPIMとリアルタイムprojectionにより複数サンプルで定量的に解析しており、その結果からケモカインシグナルはケモアトラクタントに作用するのではなく、移動開始時の内胚葉細胞の初期配置に関与していると結論付けています。
私が行った実験では一部の内胚葉細胞の動きしか見ていなかった(見られなかった)のですが、まさに木を見て森を見ずといったことだったのだと思います。自戒の意味も込めて紹介させていただきます。
1 | 京都大学・生命科学研究科 松田道行 | Re:高速パノラマライトシート顕微鏡による内胚葉細胞動態の解析 | 2013/09/30 |
顕微鏡技術はドイツに水を空けられた感がありますね。プロジェクションの話などを聞くと、やはり画像処理系とのコラボも重要だと痛感します。京大でも「生命動態システム科学」拠点事業で、情報研究科と生命科学系とのコラボが始まっています。やはり、情報系の研究者の画像処理能力はすごいです。ただ、生命科学者の側が画像処理をお願いするだけではなくて、向こうにとってもメリットのあるプロジェクトにしていかなければいけないところが難しい。ところで、この論文はビデオが15個もあるけど、最初は宣伝みたいなものでほんとにビデオである必要があるのかなと思います。なんだかんだいってもダウンロードは時間がかかりますからね。全部見るのはちょっと疲れました。 | |||
2 | 理研 QBiC 岡田康志 | Re:Re:高速パノラマライトシート顕微鏡による内胚葉細胞動態の解析 | 2013/10/02 |
松田先生の仰る通りだと思います。
これからのイメージングには高度な情報処理技術が必須です。 ところが、特に日本では情報処理分野の専門家とイメージングの専門家の コラボレーションが弱く、欧米に大きく水をあけられていると危機感を 持っています。松田先生の仰る「画像処理をお願いするだけではなくて、 向こうにとってもメリットのあるプロジェクトにしていかなければ いけないところが難しい」という部分は一面の真実ですが、実は 顕微鏡画像とくにライブイメージングで我々が普段得ている画像の処理は、 既存の画像処理手法を適用するだけで済むような単純な問題ではない ケースがほとんどです。その辺りの基本的な認識の壁をうまく崩して win-winな関係を構築できればよいのですが・・・ ポジティブな話としては、最近の長時間ライブイメージングや全胚 イメージングなどで得られる巨大なデータは、情報処理の方々にとっては いま流行の「ビッグデータ」そのもので、ありきたりではないビッグ データの好適な例として興味を持って頂けることが多いようです。 その辺りをうまい切り口にして、情報処理の専門家がイメージングの 分野にふれる機会を設けることが出来るとよいかもしれませんね。 |
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