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PubMedID 24040101 Journal PLoS One, 2013;8(9);e73874,
Title Antigen-specific suppression and immunological synapse formation by regulatory T cells require the mst1 kinase.
Author Tomiyama T, Ueda Y, ..., Okazaki K, Kinashi T
関西医科大学附属生命医学研究所  分子遺伝学講座    植田 祥啓     2013/11/18

制御性T細胞の免疫シナプスとリンパ節動態の観察
私たちの研究室ではインテグリン特にLFA1(αLβ2インテグリン)とその調節シグナルの免疫系における制御機構を、イメージングを利用して検討しております。9月にPLOS ONEにわれわれの研究室で以前に同定したインテグリンの調節分子であるMst1キナーゼ(STK4)が免疫応答の抑制に重要な制御性T細胞(Treg)における抗原認識、すなわち免疫シナプスの形成および樹状細胞との接着を制御していることを報告いたしましたので紹介させていただきます。

実験系ですが、免疫シナプスの観察は抗原ペプチドMHC複合体(Alexa488標識)、とLFA-1のリガンドであるICAM-1(Cy3標識)をloadした人工生体膜(PM)上にTregを播き、形成される免疫シナプス構造の過程を(接着面の中心に抗原レセプターが、その周囲にリング状にLFA-1が局在する)TIRFでタイムラプスイメージングしました。また、リンパ節内のTregの動態を見るために、抗原パルスした樹状細胞をfootpadからいれこんだマウスの責任リンパ節のスライスをvibratomeで作成し、Cell sorterで単離した抗原特異的な(OT-II)制御性T細胞、ナイーブT細胞をそれぞれ蛍光色素(CFSE, CMTMR, cMAC)で染色してスライスに入れ込み、そのリンパ節スライスを高酸素還流下のexplant法で2光子顕微鏡により3色のタイムラプスイメージングを行っております。

Mst1はsmall GであるRap1のエフェクターとしてインテグリンの親和性および、先端への輸送を促進する分子であると考えられていますが、意外なことに、Tregの免疫シナプスにおいて、LFA-1の局在だけでなく抗原レセプターの局在の形成も制御していることがわかりました。また、Mst1欠損Tregは短時間の接着を行うものの、正常型のTregのように樹状細胞にまとわりつくようなことはなく離れていってしまいます。このことはMst1がインテグリンのみならず、抗原レセプターの細胞内・表面の輸送にも関係しているか、LFA-1の局在が抗原レセプターの局在に必要である可能性が考えられ、現在Mst1の下流シグナルの探索を含め検討中です。

興味深いことに、いままでナイーブT細胞とTregは一律に抗原を提示した樹状細胞と安定な接着・停止をすると考えられていましたが、今回の研究により、リンパ節内のTregは停止せずに抗原提示細胞の周囲をまとわりつきながら短時間の接着を繰り返しながら行うことがわかり、また、ナイーブT細胞と同様に免疫シナプスも形成するものの、ナイーブT細胞のように停止せずにPM上を動き回るという面白い現象が観察され、その制御やbiologicalな意味を検討中です。
   
   本文引用

1 理研 IMS-RCAI  組織動態研究チーム  岡田 峰陽 Re:Re:制御性T細胞の免疫シナプスとリンパ節動態の観察 2013/11/18
植田先生

Tregが抑制機能を果たすときに、抗原提示細胞とどのような相互作用をするのかは興味深い問題です。抑制のメカニズムとしては、CTLA4で結合することにより抗原提示細胞のB7をレスポンダーT細胞のCD28からマスクするとも考えられますし、もしくはB7の発現自身を低下させてしまうという報告もあるようです。短時間の接合を繰り返すのであれば、B7をマスクしているというよりは、B7を低下させている方により合うのでしょうか。

細かいことなのですが、OT-II,FoxP3-GFPマウスでは、普通に(CD4+の10~20%くらい)GFP positiveの細胞がいるのですか?OT-IIには、OVA入りの食事を与えたり、OVAを自己抗原として発現させない限り、Tregはほとんどいないと思っていたのですが。教えて頂けると助かります。
      
   本文引用
2 関西医科大学附属生命医学研究所  分子遺伝学講座  植田 祥啓 Re:Re:Re:制御性T細胞の免疫シナプスとリンパ節動態の観察 2013/11/18
岡田先生

コメントをしていただきましてどうもありがとうございます。

> Tregが抑制機能を果たすときに、抗原提示細胞とどのような相互作用をするのかは興味深い問題です。抑制のメカニズムとしては、CTLA4で結合することにより抗原提示細胞のB7をレスポンダーT細胞のCD28からマスクするとも考えられますし、もしくはB7の発現自身を低下させてしまうという報告もあるようです。短時間の接合を繰り返すのであれば、B7をマスクしているというよりは、B7を低下させている方により合うのでしょうか。

私たちの観察では(短時間のイメージングなのわかりませんが)、naive T細胞と樹状細胞の相互作用を直接Tregが競合的に抑制する像はいまのところ得られていませんので、前者の可能性は低いのではないかと考えております。むし今までの説からするとB7分子の低下やパーフォリンによるkillingの可能性があると考えられます。

> 細かいことなのですが、OT-II,FoxP3-GFPマウスでは、普通に(CD4+の10~20%くらい)GFP positiveの細胞がいるのですか?OT-IIには、OVA入りの食事を与えたり、OVAを自己抗原として発現させない限り、Tregはほとんどいないと思っていたのですが。教えて頂けると助かります。

岡田先生のご指摘のとおり、OT-IIマウスは野生型のマウスに比べてFoxP3陽性制御性T細胞が少ない(数%)のですが、理由はわかりませんが、FoxP3-GFPマウスはnon-transgenic, transgenic共に胸腺・末梢ともにGFP陽性細胞が多いです。まさかと思いまして抗FoxP3抗体(FJK-16s)で染色してタンパク量を検討してみましたが、GFP+細胞はほぼ抗体でもFoxP3陽性でしたのでTregであると思われます。

      
   本文引用
3 理研 IMS-RCAI  組織動態研究チーム  岡田 峰陽 Re:Re:Re:Re:制御性T細胞の免疫シナプスとリンパ節動態の観察 2013/11/18
植田先生

有り難うございます。とても参考になります。
      
   本文引用


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